短いお話
□もどかしい話
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「……知ってるかリーマス。」
「何?ジェームズ。」
「あれで2人付き合ってないんだぜ。」
「え?そうだったの?!」
抱き合っている2人の背後でコソコソとするジェームズとリーマスだったが当然2人には聞こえていた。
「いつの間に……。」
「や、やっほー。」
今更遅いのは分かっているがアンはシリウスを突き飛ばしてなんでもない顔して振り返った。
突然の事にシリウスはソファへと飛び込んで、そのままひっくり返った。
ジェームズとリーマスからの視線は当然優しい。それがかえって気まずい。
「僕てっきり2人が付き合ってるものかと思ってたよ。」
リーマスはあっけからんと言ってのける。
「僕もねー、そう思ってたんだけどどうやら違うみたいでさ。リリーと僕の方が先に付き合うんじゃないかなこれ。」
それ本人達の前で言うことではないと思う。
ひっくり返ったシリウスはやっとこさ立ち上がって口を開こうとしたがそれより先にアンが半分叫ぶようにして言う。
「誰がこんなやつと!!!!!」
恥ずかしさから出る照れ隠しだと分かったのは残念ながらジェームズとリーマスだけだった。
暫く開いた口が塞がらないシリウスは1度きゅっと口を閉じてからもう1度開いて最初に言おうとしたのとは真逆を言う。
「俺だってこんなの御免だね。」
あ、と思った時にはもう遅い。シリウスは自分の頬が熱を持って痛い事でぶたれたことを理解した。
「シリウスなんて大嫌い。」
「……、」
瞳は今にも泣き出しそうにゆらゆらと揺れて。
再度シリウスを突き飛ばして女子寮へと走っていく。今度は全く力が入っていなかったがシリウスも簡単によろけて近くの椅子に力なく座った。
「………………謝っておけよ。」
「…………。」
普段は真っ直ぐな眼が今はどこを向いているのか分からない。
喧嘩するのは初めてでは無いのに初めてしたみたいに絶望しているのは嫌いと言われたからだろうか。