短いお話
□もどかしい話
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目が覚めた時、談話室は予想に反して暖かかった。
それに何やら毛布まで掛けられている。
どうやら誰かが戻ってきたようだ。残っているメンバーから大体の検討をつけて(というかそれ以外に考えられなかった)お礼を言おうと目を開ける。
「……お、起きたか」
隣で大人しく本を開いていたのは予想とは全く違う人物だった。
「……………………シリウス?」
「他に誰がいるんだよ。ジェームズにでも見えるか?」
「それは……」
見えない。当然だ。
シリウスとジェームズでは違いすぎる。
片や学年一の美形とうたわれるシリウス。
ジェームズは……まあ、察して欲しい。モテる方ではない事だけは確かだ。
「というか、なんでいるの……ジェームズとリーマスは?」
当然の疑問をぶつければ肩を竦められる。
「気分じゃなかったから抜けてきた。」
「ふーん……」
そうするとリーマスが心配になる。
普段は2人の暴走を遠巻きに眺める方が多いリーマス。ジェームズの悪戯の対象にされていないといいのだが。
座ったまま寝ていたため身体が固まってしまった。軽く伸びをすると毛布が膝辺りまでずり落ちた。
「あ、これ有難う。」
「ん。」
気のない返事をしてシリウスは立ち上がってズボンのポケットに手を入れて……何かを手に持って直ぐに出した。
「ほらこれ。」
差し出されたのは談話室で眠るまで苛立ちの原因だった……シリウスから去年のクリスマスに貰ったネックレスだった。
もう見つからないと思っていた。
「……どこにあったの?」
それに失くしてしまった事は言っていない。
正確には投げ捨てられたのだが。
「投げてなかったみたいで自慢してたから返してもらった。」
恐らく仕返しは充分にしたのだろう。何処かスッキリした表情で言う。
「もう取られるなよ。」
泣きそうな顔をしているのだろうか。優しく笑ってから目元へキスをされる。
肩に着いた髪を避けるようにしてネックレスを着けてくれた。
「うん!」
戻ってきたネックレスを1度大事に握ってからシリウスに飛び付く形で抱き着いた。