短いお話

□もどかしい話
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「さいっあくだ……」

グリフィンドールの談話室の一角で女子生徒が1人、コート乱雑に脱ぎ捨てて1人がけのソファへと投げつけた。
彼女の名はアン。
今はクリスマス休暇の真っ只中なので今の所談話室には彼女1人だ。
残っている生徒は居るのだが遊びに出掛けてしまったらしい。

ボフンと音をたてて投げつけたコートの上から腰掛ける。
皺になった所で魔法があればどうにか出来る。
男勝りな性格に反して家事魔法が得意になったのは自分よりヤンチャな友人達のおかげだろう("せい"と言っても支障はないだろうが悪いことではないのでおかげと言っておく)

普段の制服とは違って今は動きやすいパンツスタイルの為気を使わずに足を投げ出す。まあスカートであろうと今はアン1人なので同じようにしただろうが。

「はーー。」

重苦しい溜息を零して目を閉じる。
最初に言ったように何か最悪な事態でもあったのだろう。
眉間には三本のシワが深く刻まれている。

暫くそうしていると眠くなってきた。
外とは違って談話室はぽかぽかと暖かいからだろう。
ウトウトと船を漕ぎながら暖炉を見れば火は少し小さくなっていた。
このまま眠ってしまえば確実に眠っている最中に日が消えてしまう。
外へ遊びに行っている友人達も暫く戻らないのは知っていた。今薪を足さなければいけない。頭では理解しているが身体は別だ。
苛立ちも忘れてこの気持ちいい眠気に身を委ねられるなんてこれ以上の幸せはあるだろうか。

……いや、無いな。
そう結論づけてアンは意識を手放した。
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