進撃 ティアドロップ

□権力者
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「書類、届けに行って来ます」


「あぁ」


これ以上ここに居たらウダウダ余計なこと考えちまいそうだ。


書類を持ち、兵長の執務室を出る。


命日つったら、やっぱり墓参りか?


そういえば俺、母さんの墓作ってねぇな...。


骨もきっとあいつの腹ん中だし。


モヤモヤと考えながら書類配達を終えた。


「只今戻りました」


「遅かったな。

クソでも長引いたか?」


「ち、違います!

ちょっと考え事してただけで...」


「ルゥのことか?」


図星をつかれ、息を呑む。


「ったく、てめェは分かりやすい」


フッ、と鼻で笑われた。


「別に兵長には関係ないじゃないですか」


「そうだな」


兵長との間に気まずい空気が流れた時、それを断ち切るようにノック音が響いた。


「なんだ」


「私」


この声...!


「ったく、今日は1人で居たいんじゃねェのか?

ルゥ」


ガチャリと兵長が扉を開ける。


「ちょっと顔を出すだけ、長居はしないよ」


黒いワンピースを着たハルさんが立っていた。


いつもより声のトーンが低い。


「これ、提出しておこうと思って」


紙を1枚兵長に差し出した。


「今日提出の書類なんてあったか?」


「ないよ。

ハンコをポンッと押してくれれば良いんだよ?」


「んな適当に押せるか、バカ」


「だよね、知ってる」


そう笑うハルさんの頬は少し引きつっていた。
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