短編

□心配性な
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「わか!ちゃんと安静にしてるんだよ!」

「はいはい…。火、気を付けてよー」


大丈夫ー!なんて冷蔵庫の中身をチェックしながら玲香は返事をするが、こっちは何だかハラハラしてしまって落ち着かない。

先日、指に怪我を負ってしまったわたしは、家事も料理もできなくなって困っていた。
他のメンバーに何げなくその話をしていると、どうやら玲香の耳に入ってしまったらしい。
急にわたしの家に押しかけてきたと思ったら、料理を作ると言いはじめたのだ。

いや、さすがに不器用ながらも、玲香が料理を一人で作れることぐらいは知っている。
自分を心配してわざわざ作りに来てくれたのも嬉しいのだが…


「玲香ー!やっぱり今日は宅配で済ませるから大丈夫だよー」

「えーなんでよー!いいじゃんわたしの手料理たべれば!」


玲香も折れてくれる気はないみたいで、キッチンからのぞかせた顔はすごく不満気だった。


「むーなに。わたしのご飯たべたくないの?」

「いや、そうじゃないけど…」


なんて言えば伝わるのかなぁと思っていると包丁で野菜を切ろうとする玲香が目にはいった。


「っちょ、ちょっと待って!れいか!」


慌ててキッチンに飛び込んでいくと玲香が驚いたようにこっちを見る。


「せめて!わたしに野菜を切らせて!玲香はフライパン担当!!」

「へ??いや、それじゃ私の意味ないじゃん」

「〜〜〜っとにかく!玲香は包丁持っちゃだめ!!」


普段見せないわたしの狼狽えように、玲香も素直に包丁を置いた。


「わ、わか?」


はぁ〜と安心してその場にしゃがみ込むと、玲香は心配そうにわたしの頭を撫でてくれる。
玲香の手、落ち着くなあと思っていると、上からクスクスと笑い声が聞こえてくる。


「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。包丁で指切ったりなんてしないから」

「…わたしだって指切る前はそう思ってたよ」


なかなか過保護すぎる自分に呆れながらも玲香の手を取る。さっき自分の頭を撫でてくれた傷ひとつない綺麗な手。なんだか急に愛しくなって思わずその指にキスを落とす。


「!!!!」

「……玲香は包丁なんかよりも、私の頭を撫でてくれてればいいの」


言ってしまってから自分ですごく恥ずかしくなって顔を背けると、ぱああっと顔を輝かせた玲香が、わかちゅ〜!なんて私の頭をこれでもかと撫でまわした。
髪がぼさぼさになるけど、まあいいか?なんて


「今日は宅配で許してあげる!でも明日からは包丁使わない料理つくってあげるからね!」


なるほど…それはいい考えかもしれない。
玲香の手料理が食べれて、玲香の手も安全。
なにより明日も家に来てくれるってことが、一番嬉しいかもしれない。

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