短編
□朝早い君
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長い夏休みも終わり、9月に入って新学期が始まった。
まだ残暑が残っているとはいえ、朝も早い時間。
学校へと向かうイマドキは頬を掠める冷たい空気が気持ちいいと思った。
「あれー?イマドキ??」
「あーほんとだ!珍しい!」
せっかくのいい天気。このままどこかに誘われるまま、学校をサボってしまおうか。
そう思っていたイマドキにちょうどよく声がかけられる。
少し怪訝そうに振り返ると、そこにはななまるとショパン、コテの仲良し3人組がこちらに手を振って近づいてくるところだった。
「げっ…おまえら、こんな朝早くから一緒なのかよ…」
「いつもはこんなには早くないけどね〜、ななまるが友達にお花にお水あげる仕事たのまれたみたいでさ〜」
「別に二人とも付き合う必要なんてないのに…ホンマありがとな。」
「私たちが好きでやってることだから別に気にしなくていいんだよー!」
キャッキャっと朝から元気な3人を尻目にイマドキはげんなりとしながら下駄箱の方に向かう。
「そういうイマドキこそ珍しくない?ぜったい遅刻したりサボったりしそうなのに!」
「ね〜。もうすっかり優等生だね〜!」
「…うっせ、べつに早く来て席で寝たいだけだ。」
優等生という言葉に嫌悪感を感じギラッと睨みをきかせると、ななまるが間に入ってまあまあとなだめてくる。
心の中で舌打ちをしつつ、無視して下駄箱を開けると、すぐにいつもと違う様子に気づく。
「あ?…なんだこれ?」
ピンク色のそれを手に持ってみると手紙だということがわかる。裏には若月さんへという文字が書いてあるので、入れ間違いではなさそうだった。
その様子をみていた3人もそれがなんだかわかったのか驚いた顔をする。
「え…それってまさか」
「だれから!?だれから!?」
本人以上に慌てているその様子とは対称的にイマドキはずいぶんと余裕そうだった。
「安心しろ、別に受けたりはしねーから」
「へ?受けないの??…なんで!?」
「ああ…。ケンカはもうしないって、約束したからな」
ふっと笑って見せるが、3人とも顔にはてなを浮かべたまま動かなくなってしまっていた。
「なんだよ、信用してねーのか?」
イライラしながらも聞いてみると、今後こそ状況を理解したななまるが口を開いた。
「それ…果たし状じゃなくて、恋文とちゃうん?」