book ー偽りなき涙
□海賊 トラファルガー・ロー
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「アンタは、トラファルガーロー?」
ローズは、目の前の男を見て眉を潜めながらそう呟いた。
コイツは敵か否かのそれが解らない今、どういう行動を取るかはさておき警戒はする。
目の下の隈といい、その極悪人面といい、そして担いでいる大きな刀といい、敵ではないにせよ勿論味方でもないだろう。
相手の真意とその動き一つ一つに注意を払いながら、彼の様子を伺った。
「まぁ、そう殺気立つなよ。オレはある提案をしにきただけだ。」
「提案?…………死の外科医がアタシに、提案ねぇ。」
ジリジリとお互いの間合いを詰めさせないよう十分な距離を保ちながら攻撃体制を整える。
「あぁ。お前、俺の仲間にならねぇか?」
だが彼の発したそれは初対面にしてはあまりにも唐突で無鉄砲すぎるものだった。
彼の発言にローズも思わず緊張感が薄れる。
「えぇ、っと。………アンタはバカなのか、それともタチが悪いのか、どっちだろう? え、ちなみに断った場合は?」
「愚問だな。オレは海賊だぞ?勿論無理矢理にでも連れてくさ。」
「あーー、なんでアタシを仲間に?」
「気に入ったからだ。」
「OK、理解したよ。 キミはタチの悪いバカだッ!」
「!(そうやすやすとは連れ去られてくんねぇか。)」
ローは、いきなり自分目掛けてふり下ろされたローズの脚を避けてとっさに掴む。
そしてそのまま、
「ルーム、シャンブルズ。」
彼の能力を使い自分の舟へと彼女を連れ去った。
「ッ!? こ、こは……」
一瞬で目に映る物が変わり、そして先程とはまったく違う所にいるこの今の状況が掴めず女は慌てる。
まずいと慌てて男の姿を確認しようとするがそれは間に合わず、
プスッ
「ウッ…………何、をッ、……っ」
「安心しろ、麻酔薬だ。 ………少し大人しくしてろ。」
力なく倒れる体を支えられ、次第に薄れていく意識のなか見たのは、不適に笑うローの表情だった。