book ー偽りなき涙

□海軍見習いの青年
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『ハァーー、よりによってなんでじいちゃんの守る島なのよ。』


皆が島に降りた後、船番を任されたアタシはと言えば、特にする事もなくただただ青い空と海を眺めている


勿論、最初は存分に島を楽しむつもりだった……が、じいちゃんのナワバリとなると話は別だ。


いつものように暴れる所か普通の観光でさえヒヤヒヤする、いわば恐ろしい肝試しのようなものになってしまう。


何か問題を起こせばアタシは確実にこの世から消される。


そうなれば上陸などするわけもなく、まぁ今の状況に繋がってるわけだ。



とは言ってもこんな天気のいい日、やることもなく寝ていれば人間自然と眠くもなってくる。


もういっその事寝よう、そう決めたアタシは静かに目を閉じた。



『(お、これはいい感じ。)』






シーン



『(あ、だんだん眠くなってきt)「ぎゃあぁーーーーっ」………………。』






何やらバタバタと三人くらいのヒトが走る音が聞こえてきた。

『(あ、あー、ごめんよ少年。自力でなんとか逃げ切れ。人生ピンチなんていくらでもあるさ。)』





どうやら追われてるようだが、今のアタシは命が惜しい。

目の前に困ってる人がいたら助けるが、今は見えてないし見てもない。


それにもしかしたら少年が逃げ切れるかもしれない。




「うわっ、は、離してぇーーっ、」


「手間取らせやがってっ、大人しくしろっ、」

「やぁーっと捕まえたぞ。」





(つ、捕まってしまった。あわよくば逃げ切ってくれ、と願った直後に…………)




ガブッ
「痛ってぇ、くそっコイツ噛みつきやがった!」


ドシャ
「うわぁっ、」



「痛い目見ねぇと解らないらしいなっ、。これ、なんだか分かるか?ピストルってんだ。すーっごく痛いぞぉ〜?」




男の発した言葉にまさかっ、と思いここで初めて状況を確認すると、確かに少年がピストルを向けられている。


(んもぉーーっ!)



気が付けばアタシの体は船を飛び出していて、






カチリッ


「う、ううっ、ひっく、」






ドォーン








アタシが少年を抱き込んだのと、少年に向けられたピストルがアタシの肩を貫いたのはほぼどうじだった。



「えっ、?」


腕の中で、かすかに少年の驚く気配がする。


「お、おい、当たっちまった、あ、あぁっ、」

「し、知らねぇよ、俺のせいじゃねぇっ、」




少年が無事なのを確認すると、早速目の前のアホ面男二人を睨み付ける。



『おい、』


「「ヒイッ、、」」



『ピストルってのはなぁ、脅したり、相手の恐怖を誘うようなものじゃねぇーんだよ。命を取る道具なんだよ。』



「や、やべぞ、こいつ鬼姫だっ、」


「お、鬼姫って、あの鬼姫##NAM1##?」



アタシが一歩一歩男達に近づくと、それにあわせて彼らも一歩一歩下がっていく。



『命取る覚悟もなしに当たったくれぇでビビるヤツが、使っていい道具じゃねぇーんだわかったかっ!!』


「「ヒイーーーーっ」」



青ざめて一目散に逃げていった男達の背中を見ても、こっちはやるせない思いだ。




なぜなら、

『テメェらのせいでこっちは命の危機じゃボケェ!   ったく、おまけに鉛玉までプレゼントしてくれちゃって。』





そう腹いせに叫んで見るが、もうとっくに遠くまで逃げたいった彼らに声が届く訳もなく、出るのはため息ばかりだ。



「あ、あの、っ助けてくれてありがとう、」



『あー、キミ運が良かったね。でもなんでこんなとこにいたの? ここの岬は海賊船ばっかだから危ないよ?』


「ま、町で、お母さんとはぐれちゃって、ま、迷子に、」



『全く、こんな時代だもの、売り飛ばされてたかもしれないし、さっきので死んでたかも知れないんだよ?』


「ご、ごめんなさいっ、ひっく、うぅ、」


少し強めに当たると、少年は謝りながら泣き出してしまった。



『あーあー、なくなよ。謝るならお母さんに謝りなさい。きっと心配してるよ。送ってってあげるから、お母さんの所に帰ろ?』


「うん。」




ドクドクトと流れる血が腕を伝う感覚があるが、取り合えず止血だけして傷口を覆うと、怪我をしてないほうの腕で少年をだきかかえる。



『しっかり捕まっててよ?』


「え?っうわぁーーっ」



バサバサァーーッ




なんとかバランスを取りながら、少年の迷子になった町を探す。

恐らくさっきアタシ達のいた所からそう離れてはないだろうと思いながら飛んでいると、案の定近くにたくさんの人がいる町がすぐ見つかった。



『君がいたのはこの町じゃない?』


「つ、翼?、  と、とんで、」



『ちょっと、聞いてんのボク?』


「あ、ここ、ここだぁっ、ありがとうお姉ちゃん!」

 
 泣いたり不安そうだった少年の顔がみるみる輝かしいものにかわっていき、やっと笑顔を見せてくれた。


『……そう、良かったね。 ねぇキミ、あそこに海兵さんがいるのが分かる?』



「うん。」


『あそこのお兄さん達に、迷子だって言えば助けてくれるよ。キミの名前と、お母さんの名前も言える?』


「うん。言えるよっ! ありがとう、お姉ちゃん!!」



嬉しそうに掛けていく少年が海兵達が集まってるところまでいったのを確認すると、早々と町に背を向けて脚を動かす。


さっき無理して飛んだせいで血が出過ぎたらしく、視界がゆれて体がフラフラしてきた。





「まってくださぁーーい、」

「お、おいコビー、オレをおいてぐなよっ!」




後ろからかけてきたのは、さっきの海兵の集団の中にいた二人だった。




勘弁してくれ海兵なんかとは関わりたくない。


問題起こして海兵にあって、その上じいちゃんにまで合ったらアタシは生きてられないんだ。





だが海兵二人のうちの一人が発した言葉は信じられないものだった。



「ルフィさんの、妹さん、………ですよね。」












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「あれ、キミどうしたの?迷子?」


「うん。海賊から助けてくれたお姉ちゃんがね、海兵さんのとこにいけって。」



「海賊っ!? よかったなぁ、お前無事で」


「うん! お姉ちゃんカッコいーんだよ。翼が生えてるお姫様なんだ」


「姫、……?」


「うん、海賊のヒトが鬼姫って。」


「「!?、」 へ、ヘルメッポさん、」


「あぁ。  おい、そいつの髪の毛の色は赤で目は金色だったか?」


「そうだよっ、なんでわかったの?」


「やっぱり、ならその人が、」





「あ、おいコビーっ、!   おいガキんちょ、ここのヤツは皆海兵だ、好きなやつに助けてもらえ、」



「うん、わかった。」
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