book ー偽りなき涙
□海賊 トラファルガー・ロー
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「キャプテン。その子まだ起きないの?」
「あぁ。少し強めの麻酔薬使ったからな。」
「(おい、ペンギンよ。拉致は不味くないか?)」
「(いや、それよりコイツ、どっかでみた感じしないか?)」
なんだろう、やけに回りがうるさい…………
あたし、何してたんだっけ……
確か、北の海の海賊と合って、それで、
ん? …………か……い、海賊?
ガバァッ
「ここは、ッ!?」
「うぉっ、ビックリした。」
「よかったぁ。ちゃんと目が覚めて。」
「やっと起きたか……。ここは俺達の舟だ。」
慌ててアタシは状況を整理する。
たしか、………………そうだ、舐めてかかったせいで脚を掴まれて、それから場所がいきなり変わって、変なものを打たれて、………
「あ、あぁ〜呆れた。あんた、ほんとに無理矢理連れてきたわけね。」
「まぁな。それより、体に変化はないか?」
「……………んー、麻酔による血圧と運動能力の低下かな? 」
「…………だろうな。お前、医者か?」
「いんや、普通に頭のイイだけの女の子ですよん。」
「普通の女は海賊やってねぇだろ。まぁ、見かけによらず賢いのは意外だな。」
「あらら、ひどい」
そんな事より、アタシはどうやってこっから逃げるか考えよう、うん。
まず、幸いここにいるのは船長と帽子かぶった二人と、それから一匹。
二人と一匹はどうにかなるにしろ恐らく船長は能力者だろう。
とすると麻酔打たれたアタシにはかなり不利ではないか?
てかムリゲー。
いやまて、確か白熊のほうもしゃべってたから能力者なのかも……となると能力者二人を上手く動かない体で相手しろと?
いや、それ以前に、
「何でシロクマがしゃべってんのぉーーーッ!?」
「シロクマがしゃべってすいません…………。」
打たれ弱ッ!
うわーー、めっちゃ落ち込んでる…。
可愛いな。
「お前にもう一度言う。俺の仲間になれ。 ちなみに拒否権はない。」
「なら聞くなヨ…………てか随分簡単に言うねぇ。今は力が出ないから良いとして、後の事は考えてんの?」
「…………いや。だがお前が何か妙なマネしたら、俺が殺るさ。」
………成る程、それが出来る力と自信があるからアタシなんかこわくないってか。
自信過剰なのか、コイツ。
「本当に平気? 実際、ここにいる全員を殺せる位の力はまだ残ってるけど?」
そういうと、面白帽子の二人は一斉に殺気立ってアタシを警戒する。
「クククッ、やってみろ。だが結局俺達を殺した所で、お前はここから逃げらんねぇぜ?」
「………?(逃げらんないって、物理的に?そう言えばここ、気圧が地上と違う………まさかっ!)」
アタシはこんなことにも気付かなかったのか……。
どうりで、潮の臭いも、日の光りもかんじないわけだ。
まさか、気に入ったからといってここまでするとは、恐れ入ったよ。
「ははっ、またやられた。………ここは、海の中なんでしょ? あーあ、アタシの負け。…いいよ、アンタの仲間になってあげる。」
この人となら、面白い冒険が出来そうな気がする。
だから、ついてってもイイかもしんないと思ってしまった。
「ホント? よかったねぇ、キャプテン」
「マジかよ! こんなおっかないやつやめときましょーよぉ。」
「ハハハッ、 イイじゃねぇーか。可愛いし面白ぇし!」
賑やかと言えば聞こえが良いが、いささか無用心すぎんだろ。
平気か? コイツら。
考え事をしていたら目の前に船長さんが。
「改めて歓迎する。 オレの舟へな。」
「ヨロシクね。 船長さん。」
ってなことで、アタシはこの舟の仲間になりました。