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□You know what...
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チェヨンside
「あのさ....」
私の言葉に振り向きその綺麗な瞳で見られるとさっきまで持っていたはずの勢いと勇気は一気に臆病風に吹かれて縮こまってしまう。
喉まで出かけた言葉に我に返って飲み込む。
「あ、いや。水、取って欲しくて」
その瞳から逃げるように目をそらしてテーブルの脇に手を伸ばす。
ジョンヨン「ん。ストローは?いる?」
わざわざソファから体を起こしてペットボトルを取ると、気を利かせてキャップまで緩めて渡してくれる。
「ううん、いらない。ありがと」
私のまだ何か言い残したような表情を察したのか、眉毛を上げて少し首を傾げたオンニは「何よ」と不思議そうに笑いながらそのまま目線をスマホに戻した。
実はね、ずっと前からオンニのこと好きなんだよ。
頭の中で何度もシミュレーションしてるはずの言葉なのにどうしてこんなにも言えないんだろう。
言ってしまっていいの?
関係が壊れちゃうんじゃ?
でもきっとオンニも私の気持ちわかってくれるはず。案外うまくいくかも。
だけどもしかしたら変って思われちゃったり、嫌われちゃったりしたら。
頭の中で何度も行き来する考え。
ついうっかり言葉に出てしまいそうになる。
ぬるいままの水を喉に流し込んでもサッパリせずにまとわりつく嫌な感じ。
ジョンヨン「どうしたの?さっきから視線感じるんだけど」
「そんなに見てた?」
ジョンヨン「気づいてなかったの(笑)」
変なの〜と口を開けて笑うオンニにきゅっと胸が苦しくなる。
「オンニはさ、誰かに告白とかされたことある?」
思いのほか真剣な声になった私に何か気まずそうな表情になるオンニ。
ジョンヨン「恋愛相談なんて私にやるもんじゃないと思うけど...」
「オンニに聞きたいの。告白されたら困る?」
ジョンヨン「困るっていうか....私そういうの慣れてないし」
私の話はやめようよと言うオンニは、好きな人でも出来たの?告白された?と話題を変えようとしてくる。
「そうだオンニ!少し飲みながら話そうよ」
ジョンヨン「珍しいね、良いけど」
どこまでも臆病な私はお酒の力に頼ってしまう。
「もしさー、とっても仲良いって思ってた人に告白されたらさ、その人のこと好きになれる?」
ジョンヨン「んんどうだろうなぁ、でも今まで通りに接するのに気は使っちゃうかもね」
さっきまでは嫌がってた話題を嫌な顔せずに話すオンニ。お酒って凄い。
酔ってるのか自分でもわからない感覚になっていた私は際どいところの質問をオンニに投げかける。それに返すオンニの言葉1つ1つがアルコールのように染みる。
「その人のこと嫌いになっちゃったりしない...?」
酔ってるんだ、と自分に言い聞かせてオンニの目を見つめる。
ジョンヨン「それは」
ならないよね、ならないって言って。
ジョンヨン「時と場合によるかな」
ヘラっと笑いながら答えるオンニはまだ私の気持ちに気付いてない。
ならないよ、と言ってくれたら今から口にする言葉も少しは楽に言えたかも。
握りしめる缶から水滴が指を伝う。
指の間を伝っていく水滴を見つめながらぎゅっと缶を握り直して一飲みする。
私は今酔っている。
「あのね、オンニじつは」
私はきっと今からあなたに嫌われる。
end.