short story
□ライバル
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顔が整っているから、1年の頃から何となく憧れていたけど…
3年の春、同じクラスになって初めて知った、彼の本性。まあ本人は隠しているわけじゃないだろうから、性格というべきなのか。酷過ぎる。
我ながら自分の性格も良い方ではないと自負しているが、あの男は、あの男だけは、何というか有り得ない。
もしも性悪トーナメントというものがあれば、彼は確実にシード権を持っているだろう。もはや過去のチャンピオンとして司会の隣に座って解説しているのではないかとも考えられる。
顔だけは良いあの男は、そういう奴なのだ。
3年Z組、今日もこの教室で奴とのバトルが始まる。
・・・
ミントは教室の席と席の間の通路を歩いていた。
進行方向から歩いてくる人物。
ぶつかる寸前で立ち止まる二人。
「どけよ、樺出」
「アンタがどけば?」
「お前がどけ」
ミントの肩を掴み、押しのけて通ろうとするのは同じ3Zの生徒である沖田総悟。無駄に絡んできては、チクチクと嫌味を言ってくる野郎だ。
「さわんないで」
眉間にしわを寄せ、その無駄に、嫌味な程端整な男の顔を睨み上げる。
「あーあ、さわっちまった」
席に着き携帯電話を弄っていた新八に、ゴシゴシと手を擦り付ける沖田。新八は少し嬉しそうにしていた。
そんな事には気付かず、ため息を吐きながら口を開くミント。
「…アンタさぁ、“レディファースト”って言葉、知ってる?」
「当たり前だろ、馬鹿言ってんじゃねーよ。それはそうと、どこにレディがいるんでィ?」
「目の前にいる。寝ぼけてんの?」
「見えないねィ…気の強そうな原始人なら一匹目の前にいるけどな」
「…そう、実はアタシの前にマジックミラーあんのね、だからそれアンタだわ」
ミントの言葉に、沖田は整った眉をぴくりと動かした。