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□虹
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4月の雨


狐の嫁入り


ぬるい雫が降ってくる


私は雨が好きじゃない


傘は重たいし
髪もまとまらないし
濡れるし

いい事なんてひとつもない



三田「なんでお仕事やのに雨なん…」


愚痴をこぼすと
隣にいた百花さんが


木下「三田は雨嫌いなん?」


と聞いてくる

三田「だっていいことなくないですか」


そう言うと

「たしかになぁ」と頷く百花さん



木下「でも見てみ、綺麗な虹でとるで」


そう言って空を指さす


そこには綺麗な色の大きな虹が出ていた


三田「すご…」


雨の愚痴なんて忘れて
テンションが上がってしまう



三田「綺麗ですね虹」


百花さんにそう言うと

「せやろ」なんてドヤ顔をする


可愛いなぁ百花さん


木下「赤、黄、青、橙……」

急に虹の色を口に出し始める百花さん


三田「どうしたんですか急に」


木下「いや虹ってうちみたいやなと思って」


そう言いながら自分の髪の毛を触る



百花さんが虹……


三田「馬鹿な事言ってないで
はよ仕事行きましょ」


百花さんの背中を押す


木下「えぇ…嫌や〜…働きたくなーい」



とか言いつつも足は前に進んでる



ねぇ百花さん


百花さんが虹なんて嫌です


虹はいつか消えちゃうじゃないですか


百花さんも私の前から消えちゃうんですか?




言いたくても言えない言葉
聞きたくても聞けない事が


私の中で黒い雨雲に変わる


ぽつりぽつりと頬を伝う涙を
百花さんにバレないように拭き取って


三田「やっぱり私は雨苦手やな」と


もう一度つぶやく


木下「まだ言うてたんか」


そう言って笑ってくれる百花さん



三田「でも虹は大好きですよ」


百花さん

今の私の精一杯の告白は届きましたか?


またいつかちゃんと伝えますから

それまでは待っててくださいね


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