NO J STORY
□あなたのことを
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「ふぅ…」
仕事がひと段落して時計を見ると、針は午後8時を指している。
近くの窓からオフィスの外に目を向けると、さっきまで見えていた夕日ではなく綺麗な三日月が私を見ていた。
空から通りに視線を移すと、人々が家路を急いでいるのが見えた。
今日は金曜日、心なしか人々の足取りも軽く見える。
きっと他のフロアへ行けば誰かいるのだろうが、このフロアには私以外の人影は全くない。
(…今日も私が最後か)
この春に大学を卒業した私。
特にやりたいことも見つからずなんとなく就活をし、結局第4、5希望くらいのデザイン会社に就職。
新しい生活は怒涛のように過ぎ、気づけば秋。
正直まだ慣れないし、そのせいで毎日のように残業で…今日も最後の1人になってしまった。