嘘ばっかり
□泣きたくなるほど
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「やめたい時っていつ決まるのかな」
『考えたことある?』
「むしろ常に考えてるかも」
『珍しいね、結弦が私にこんな話し振ってくるなんて』
「そう言われるとそうだね」
『その時が来たら、きっとそう思うよ』
「来るべき時がきたら、か」
『今はまだ、やりたいことの方が多いでしょう?』
「うん」
足踏みしてる理由も心のどこかにあるはずなんだけど。考えたってすぐには出てこないな。
未来を見据えてプランを立てて、念入りに人生設計してるつもりが、たまに分からなくなる。大事なモノをどこにしまったか分からなくなるんだ。
身体中探してる。
頭?胸?そんなありがちな所じゃなくてさ。もちろん喉の奥にも詰まってない。
『結弦』
「何?」
『不安そうな顔してる』
「じゃあさ、慰めてよ」
『...どうやって?』
後で見つけるからとりあえず。とりあえずさ、もう全部好きでいて。
横暴で乱雑で、
繕った嘘も、全部。
全部受け入れてよ。
いつもそうだった。やっと見つけたと思ったら手元で見えなくなって。輝いていたはずの栄光がいつのまにか安っぽいものに変わってしまって。
手に入れたものは何だったのか。途端に黒く染まってしまう。
泣きたくなるほど嬉しい日々に。
『よしよし』
「ありがと」
『この頭で何を考えてるのかな?』
「次はぎゅってして欲しいなーって」
『素直だね、今日は』
「たまにはね」
『しょうがないなぁ』
「お願いします」
子犬のように頭を優しく数回撫でられた後。次は当然のように抱きしめることを求める。蠢いている本能と欲求の答えは出てないけど、彼女の手で触れて欲しいから。
安心できる、安らげる体温が今は恋しいんだ。馬鹿みたいって思うかな?もうそれでもいいんだよ。
見つからない時はもう消してやめる。
『...あったかいね』
「...うん」
恥ずかしい今を抱きよせて、間違っても笑ってよ。
迷いも葛藤も現実も、どの選択肢だって合ってるはずなんだけど。だけど人によっては間違ってるかもしれないから。
不安になったらその度に何度でも確かめていいかな?
抱き合うという単純な行為。
お互いがお互いに首筋に顔を埋めて、
匂いも温度も交えて溶かす。
『苦しいよ』
「ごめん」
『結弦は平気?』
「ちょっときついかも」
『じゃあいいや』
「なんで?」
『お互い様』
その時言葉にならなくても、いつかはきっと。大切な物がわかる日が来るはずなんだ。
難しいな、本当に。
どうしてこんなにすんなりと進めないんだろう。壁の向こうにまた壁があって、歩いても歩いても辿り着かない。一人なら尚更のこと、だけど、一人でやらなければならないことが無数にあるから。
「泣きたくなるほど嬉しい日とさ」
『うん』
「笑えるくらいに悲しい日と」
『うん』
「どっちが多いのかな」
『うーん』
「嬉しい日の方が多ければいいのに」
『泣きたい日の方が、案外よく覚えてたりするよね』
「そういう風に出来てるんだな」
『きっと半々なんだけどね』
「きっと?」
『まぁ少し願望入ってるけど』
「数えるかな、これからは」
『出来るの?』
「んー、無理」
答えはないから、やっぱりもう一度手を繋いで。恥ずかしい今を抱きよせてさ。
こうして、分け合って。
悩んでも立ち止まっても、間違っても笑ってる。
それぐらいに能天気に歩きたいな。
そんな日があったら楽なんたけどな。
大丈夫だって、そっと諭してよ。
(泣きたくなるほど)
(答えがないから手をあげて)
(間違っても笑ってよ)
(お願い、全部好きでいて)