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□マンネリ打破!
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某 S-雑誌 「恋愛特集」

マンネリとはマンネリズムのこと。

マンネリカップルの打開策

〜長いお付き合いはときめきは減るけど、逆を言えばそれは信頼の証でもあります。お互いがお互いに無理なく寄り添えている証拠と言えます。とは言えだらだらと年月だけが過ぎてしまうと、飽きが生まれてしまい他に刺激を求めてしまうことも。仲が安定したカップルは感情も穏やかで緊張感もありません。間違った方向へ進まない為にも、今一度この機会にお互いにパートナーと向き合って見てはいかがですか?

ドキドキ感という恋愛関係においての必要条件。これをいかに長く脳内に脳内麻薬として分泌させ続けることができるのか?または減ってしまったものを復活させることが出来るのか?

今回はそんな マンネリ・倦怠期・空気感 を打破する簡単な方法を一つご紹介します。ぜひ、お悩みになっている男女、カップルの方は参考になさってみて下さい。より良い刺激になりお二人の愛が更に高まることになるはずです。ご参考までに。ご賞味下さい。〜



『...見て、これ』

「んー?」

『なんか面白いの載ってる』

「...ふーん」



特別な用事も無い週末の午後。

簡単なお昼ご飯を食べた後の、ワイドショーが賑わっている時間帯。

(のんびり、まったり、)

二人でベッドにうつ伏せに寝そべって、結弦は何やらYouTubeでフェス動画をはしごしていて。

私は私で、買ったものの真面目に読んでいなかった地元のタウン誌を眺めていた。仙台街中の人気スイーツ特集等...なんとなくページをめくっていたら、ある特集に目が止まって。


「マンネリ・倦怠期・空気感」

「打破!解決!」


なんともインパクトのある文字と言葉。

結弦とは長い付き合いだ。マンネリとか倦怠期とか、それは言葉のニュアンスもあると思うし、捉え方によってはマイナスになったりプラスになったりするものだと思う。果たして、自分たちにそれが当てはまるのか...



『...どう思う?』

「何それ、俺たちってマンネリなの?」

『...うーん』

「倦怠期なの?」

『...ちょっと違うかな』

「まぁ、空気感っていうのは分からなくはないけど」

『だよね!私もそこは同意』

「...細かい部分は深掘りしなくてもいいか」

『そうだね』

「で?どうやって打開するの?」

『えーっとね...』



打開する方法

それはとても簡単なこと。しかし裏を返せばある意味1番相手のことを理解していないと不可能なこととも言えましょう。

【相手の好きなところを思い付くだけ上げていって下さい。】



『...だって』

「へー。そんなこと、」

『パートナーの好きなところを再確認できて、それは長い期間色々な部分を共有して分かち合ってきた相手だからであって。今だからこそ、言葉にして改めて相手に伝えることに意味があるんだって...』

「なるほど...」

『...意外だよね』

「ん?」

『そんな簡単なことでいいんだ』

「え、簡単?」

『うん、』

「じゃあ...どうぞ?」

『え』

「え?」

『なんか、恥ずかしいな...』

「いや、いいよ。別に無理しなくて」

『いや!...言う、言うよ!』

「え、」



簡単だなって思ったのは本当だ。
結弦の好きなところなんて、今まであえて口にすることなんて無かったし。

自分の心の中をさらけ出すみたいで、確かに恥ずかしいけど、でも別に恥じるべき事では無い。むしろ自信を持って磨き上げてきた想いだ。

...こんな機会だから、思い切って全部伝えてみようと思う。

...けど

...やっぱり

...面と向かってだと

...照れちゃうな、、、



『えっとー、まず...』

「......」

『スケートが上手』

「ぶっ」

『笑わないでよ』

「いや...ごめん」

『あとー、かっこいい』

「なんか適当じゃない?」

『頭もいい』

「安易だなぁ、いまいち響いて来ないんだけど」

『えー...』

「これじゃあ効果は無いかもなぁ」

『うーん...』



やはり照れが入るとうまくいかないし伝わるものも伝わらない。

...これじゃあダメだ。意味が無い。

(よし、ならば真剣にやってみよう。気合い入れて仕切り直そう...)

雑誌をパタリと閉じて、目を瞑る。
脳内ににイメージする。
私の「好き」の気持ち。



『...わかった。本気出す』

「え?」

『...ちゃんと聞いててね』

「......」

『...いくよ?』

「?」



脳内に結弦の好きなところを充満させる。あれも、これも、あんなところも、こんなところも、


...ほらね。たくさんあるじゃない



『...フィギュアスケートに対してストイックで努力を惜しまないところ、自分のことも相手のことも客観的に見れていつも冷静に判断できるところ、周りの環境や周囲の人たちにも気を配れて感謝の気持ちを忘れないところ、向上心の塊で常に自分を越えようとしているところ、何事にも手を抜かない、抜けないところ、先輩、後輩、男女問わず皆んなから愛されているところ、仲間を素直に尊敬できて良いところを吸収しようとするところ、礼儀正しくて場をわきまえた大人の行動がとれるところ...』

「え、いや...ちょっと」

『何?まだ途中なんだけど』

「いや、ま...」

『切れ長の目がかっこいい、柔らかい黒髪が似合ってる、滑ってる時の真剣な表情とジャンプの時の歯をくいしばっている顔が好き、身長が丁度良くて抱き合った時に私の顔が胸元にくるベストポジションがたまらない、何気に字が綺麗、ご飯の時に水とかお茶じゃなくてコーラ飲んじゃうところが可愛い』

「......」

『さりげなく車道側歩いてくれたり、エスカレーターとか階段とか必ず私より下に立ってくれる、2人でいるときの時間を大切にしてくれる、必要以上に話さなくても理解してくれる、私の感情の変化とか、びっくりするくらいエスパー並みに気付くのが早い、リードの仕方が絶妙、強引でも無いし私の意見も聞きつつ自由にさせてくれつつ、でもポイントポイントでしっかり引っ張ってくれる、いつもいつのまにか結弦のペースに引き込まれているんだけど、でもそれがすごく心地いい、あとなんだかんだ一周回って声が好き...むぐ!』

「ストップ!!!!」

『!?』



声と同時に口を塞がれる。
心なしか頬を赤く染めて、いてもたってもいられないという様子の慌てふためいた結弦の姿。



『...ぷは!』

「もういいって!もうやめて!」



手を離された瞬間に酸素を吸った。
隣に寝転ぶ結弦を見ると、今度は塞いでいた手を自分の目元にあてがって、目を合わせないように隠している。



『え?なんで、』

「もうわかったから!」

『えー、まだまだあるのに』

「いや!もういいです!もう十分!!」

『えー?』



不服だけど、中断されてしまった。
ついには横で顔を枕に突っ伏して悶絶?している彼によって。


(......絶対王者が、照れている。)


...まだまだいっぱいあるのになぁ、結弦の好きなところ...


【打破、打開策】かぁ、、、



『...でも、やってみてわかった』

「え?」

『やっぱりマンネリなんかじゃない、私たち』

「?」

『だって、今恥ずかしがってる結弦も、それも好きだから』

「...あり、がとう」

『そうやって毎日毎日、1分1秒、好きが積み重なって...』

「...積み重なって?」

『私の頭の中に、上書き保存されていくの』

「...ふーん」

『...なーんて、重い?』

「...いいえ」

『あーあ。...今日もまた、増えちゃったなぁ...』

「...容量、足りてる?」

『...大丈夫。私のハードディスクは無限大だから』

「...なら良かったです」



神特集。ありがとうございました。


(今度は結弦の番だよ)
(...え、何それ)
(私の好きなところ、何個言ってくれるのかなぁ?)
(...え、いや)
(あー楽しみだなぁ)
(...ちょっと待ってよ!)

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