six colors boy
□3話 あおいとり(十四松eyes)
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「なんか凄い見覚えあるような気がするよ、ここ。」
僕がカフェの席に座ってキョロキョロしていると、お店の格好をしたゆきなちゃんがほかほかのカップを持ってきた。
「私、最近ここでバイトを始めたんです!
元々私のおじさんのお店だからお手伝いみたいなものだけど…。」
「わぁ!すっげー!ありが盗塁王!!」
ぶんっと素振りをして、ゆきなちゃんの置いてくれたコップを見ると、コップの乗ったお皿にお花が置いてあった。
「ゆきなちゃん、お花が入り込んでるよ!食っていいんすか!?」
「あはっ、それ私が選んで置いたお花なんですよ。
エディブルフラワーだから安心してください。」
「えぶりるふらわー?」
「エディブルフラワー、食用の、食べられるお花なんですよ。」
にこりと笑うゆきなちゃん。
「青くて綺麗だねー!青は僕の色じゃなくて、カラ松兄さんの色だけどね!」
ゆきなちゃんは、カラ松兄さん?と小首を傾げたけど、スグにお花の説明をしてくれた。
「その花は[ボリジ]。憂鬱な気持ちを勇気に変えてくれるお花らしいですよ。」
ゆううつを勇気? 僕はぜんぜーん元気!!
ゆううつなのはゆきなちゃんじゃないかなぁ?
「十四松さん、河原で私に声を掛けてくれたときにすごく悲しそうな顔をしてたので。」
僕の考えがわかったかのようにゆきなちゃんがぽつっと呟く。
遠くに行ったあの子を、あの瞬間ゆきなちゃんに重なって見えて。
君はどうして泣いてたの?って言葉と一緒に、それは僕だけの中に閉まってぐぐっとコーヒーを飲み干した。
「にがい!!!」
「あっ!ミルクとか必要でしたよね、ごめんなさい!今新しいのを…」
「ねぇ!これちょうだい!」
僕は、ゆきなちゃんが乗せてくれた青いポリ袋みたいな名前の花を彼女の目の前に突き出す。
「えっ…全然それは、構わないですけど…」
「ありがとう!じゃあまた明日ね!ごちっす!」
僕は言いながらもう家に向かって走り出していた。
「明日…?」
彼女が不思議そうに呟いていることはつゆ知らずに。