Silver Soul
□例えどんな姿でも
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溜まっていた書類を粗方片付けて一段落し、煙草に火をつける。
中間管理職というのはどうしても仕事が回ってくる。主に総悟のせいだが。9割は総悟の始末書だと言っても過言はない。
おかげで最近、と言ってももう数ヶ月前だが、付き合い始めた銀時と全く会えていない。
最後に会ったのはいつだったか・・・。
明日は漸く非番だし、仕事片付けて万事屋へ顔を出そう。そう決めて短くなった煙草を灰皿に揉み消し、再びペンを取ったその時だった。
♪〜♪〜
携帯が着信を知らせる。
取ったばかりのペンを置いて携帯を見ると、ディスプレイには『万事屋』の文字。
つい先ほど考えていた人物からの電話に少なからず嬉しくなった土方は煙草を咥えながら電話に出る。
「俺だ」
『あ、よかった・・・出た・・・』
銀時だろうと思い出ると、電話口の声はなんと女だった。
しかも、チャイナでも誰でもない初めて聞く声だった。
・・・誰だこいつ。
「誰だお前」
『えっ?ん〜ちょっと〜
今から万事屋来れますぅ〜?』
「はぁ?・・・夕方でよければ行くが。」
『大丈夫でぇーすお待ちしてまぁす』
妙に間延びした喋り方にイラッとしながらも夕方に万事屋に行く約束を取り付ける。
にしても誰だったんだあいつは。
夕方、万事屋に顔を出すためにあと4時間程、急いで書類を片付けていった。
午後6時。
何とか書類を終わらせ、食堂で軽く夕飯を済ませた後、約束通り万事屋へ向かった土方は万事屋の玄関前にいた。
電気はついておらず、人の気配もない。
あの女、呼んでおいて何なんだ。
まさか銀時と・・・・・・
そんな思考回路に陥っていた時、目の前の扉がガラガラッと勢いよく開いた。
「やっぱり来てたっ
入ればよかったのにぃ〜」
そう話すのは電話の女だった。
だった、と言ってもやはり会ったことも見たこともない女。
髪は銀髪で緩やかなウェーブがかかっている。少し垂れ気味で赤い瞳に、スラリとした手脚。よく見ると銀時の着流しを着ていて、胸の谷間が見え隠れしている。
なんで銀時のを・・・
「とりあえず入ってよ土方さんっ」
そう言いながら腕を引かれ無理矢理家の中へ入れられる。
どうやら眼鏡とチャイナ・・・あのでかい犬も、銀時すらいないようだ。
・・・てことはこいつ、気配を消してたのか?ただもんじゃないな
応接間兼居間に通されソファに座らせられる。
そして女も腕を抱えたまま隣に座ってきた。
「・・・で、何の用だ。銀時達はどこに行った?」
有無を言わさぬ様な、怒りさえ含んだ声で女に問うた。
すると女は俯き僅かに震えている。泣いているのだろうか。泣いた所で何も変わらない。だから女は面倒だと思った時、女が顔を上げる。・・・満面の笑みで。
「ぷくくく・・・土方くん騙されてやぁーんのっ」
「は?」
訳の分からない事を言う女。
何がおかしいのかずっと笑っている。
「何言ってんだお前・・・いいから用件・・・ッ!?」
言葉は続かなかった。
あろう事かこの女に口を塞がれた。この女の口で。
脳裏に銀時の顔が浮かぶ。
こんな所見られたら・・・絶対に勘違いされる。嫌われる。
そう思って抵抗しようとした瞬間腕を掴まれた。女にしては随分力が強いらしくびくともしない。
しまった、と反射的に言おうと口を開いた瞬間、女の舌がにゅると入り込んでくる。
舌を吸い、絡ませてくる女に違和感を感じた。
時折舌を引っ込め軽いキスを落としまた深く口付けて唇を吸い舐める。
まるで、銀時とキスをしてるような、そんな感覚に陥る。
ちゅ、と軽いリップ音を鳴らしぺろと唇を舐められ、女が離れる。
「気づいた?土方くん?」
楽しそうに笑う女。
そうかもしれないとわかった途端、息が上がり頬が朱を帯びた。
まさか・・・
「万事屋銀ちゃんのオーナー兼、土方くんの大事な大事なとーーーーっても大好きな、坂田銀時でぇーすっ」
ウィンクをして決めポーズをする目の前の女・・・もとい銀時に土方は唖然とする。
「銀、時・・・?え?だって、おま・・・」
銀時の体をもう1度見る。
腰まである長い髪。銀色をしていてウェーブがかったそれは確かに銀時と同じ。
しかし、ふくよかな胸に細い括れた腰、細長く色白の手脚。
どう見ても、女のそれだった。
「そーれがさぁ、辰馬の野郎が送ってきたプリン食べたらこーんなことになったんだよ〜
困っちゃったけど〜なかなか可愛いじゃん?俺
土方びっくりさせようと思って」
笑いながらテーブルの上を指さす銀時。
そこには確かにプリンが入ってたであろう空の容器と、それと同じものが入ってる箱が置いてあった。
「て、てっきり俺・・・浮気相手か何かかと・・・思っ、て・・・・・・・・・ごめん」
「やだなぁ〜銀さんは土方一筋ですよぉ〜」
巫山戯た口調は銀時そのもの。
声は女の様に高いが、よく聞けば銀時の声に似ている。
「よかった・・・銀時、銀時っ」
安心からか土方はぎゅっと銀時に抱きつく。
銀時はあらら、と言いながらもぎゅっと抱き締め返した。