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□おねむり
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のそのそ
えおえおさんの部屋まで自分の毛布を持ちながら歩いていき、かちゃりとそのドアを開けると、彼とコーヒーの香りが充満していて。
不思議なことに、いつも12時をすぎると途端に眠くなるはずのえおさんが、起きていて。
「あれ...?」
ドアが開く音で私に気づいたのか、どうしたの、とヘッドホンを外して私に問いかける
もしかして、実況撮ってたのかな、それはあまりにも申し訳ない、と思っているとふんわり安心させるように笑って、大丈夫っす、実況録ってないよ、と優しくいってくれる
その優しさに甘えて、あの、ともにょもにょ口元だけで喋っていると、わざわざ立って、私の方に来てくれて、どしたの、と屈んでくれて。もう申し訳なさでいっぱいになりながら、一緒に寝てほしい、とお願いする
「...一緒に?」
「いっ、しょに...」
「えーと、同じベットで?」
「はい...」
うーん、と低いうなり声が聞こえて、やっぱり迷惑なら、と身を引こうとすると、いや、迷惑とかじゃないんすけど、まあいいか
なにか諦めたように、パソコンの電源を切って、どぞ、とベッドの奥を進めてくれる。
「わたし、落ちるように見えますか」
「あ、あー...まあちょっと心配っすね」
「ふふ、ですよね」
失礼します、とお邪魔すると、えおえおさんの香りいっぱいに包まれると、隣に少しの距離を開けて寝ているえおえおさんの背中が目の前に広がっていた
ほんのり鼻に広がる爽やかで甘いのは彼が使っているシャンプーの香りだろうか、スウェットに毛玉がついてるのも彼が今まで使ってきたものと思うと、愛着がわく
控えめに、きゅ、と裾だけ握るとぴく、と動く彼
ぁ、しまった、だめだったかな
くるりと、首だけ後ろを少し向く彼。
「あのですね、そういうのほんと、だめなんで」
やっぱり、失敗した
ごめんなさい。変な気が起こらないように、私も後ろを向いて寝ると
「あ、あー...いやだったとかじゃなくて、ですね、そういうのなんというか、困ると言うか、でも、いい意味でと言うか」
へ?どういうこと?ですか?
ついきいてしまう。だってだって気になる。
「だ、からですね、ちょっと、きゅんとくるというか、そゆこと」
そんなこと言われたら、許されると思っちゃう
こちらを向いてるえおえおさんに、思いきって正面から抱きついて、多少形を崩す毛布に構わず、ぎゅうう、と音が出るのではないかと言うほど抱き締めた
「え、ぇ...え?」
胸いっぱいに吸い込む彼の落ち着く香り
狼狽えるえおえおさんをそのままにして、わたしは静かに眠る、もう寝る。恥ずかしすぎるから。
でも、寝るときに後ろに腕を回して、とんとん、と叩いてくれたことは覚えてるよ