本棚

□ちゅーしたい! キヨ
1ページ/1ページ

俺には付き合って三ヶ月経つ彼女がいる

しかし、キスはしたことない、ということはもちろんそういうことも致してない、まあ確かに、先にそういうことをやってしまったら目新しさというか、そういうものに欠けるし、それ目当てだと思われたくない



駄菓子菓子

付き合って3ヶ月の男女がいまだに最高のスキンシップが手をつなぐだけ、というのはどうなのだろう
俺としては、もっと深くまで、というか、もう少しスキンシップあってもいいと思うんだけど...
触ろうとした瞬間、やめて、って恥ずかしがるあいつの顔を見たら、なんか、酷いことできなくなるというか...嫌、でももっと困らせたくなるというか...
そんな感情に揺れている

今日は、今日こそは、少しだけでも進展できたら、と願うばかりだ

だって今日は...





「ただいま〜」
「んあ、おかえり」

俺がやってたゲームを、俺より早いところまで進めているこいつは普通にゲームがうまいんだと思う、ホラーは何も手がつけられていないが
テーブルの上を見ると、いつもより手の込んでいる料理が並んでいる

理由はなぜだかわかりつつも、自分からは言い出しにくく、それについては何も言わなかった

「いつもより、早いね、いつもはもっとこーすけくんたちといるのに」
「そりゃ、まぁ、たまにはそんな日もあるだろ」

変に意地を張って、二人とも今日が何の日だか、なんて言わない


いつも通りに、ご飯を食べて、テレビを見て、◯◯が可愛いなんて言って(名無しさんは少し機嫌が悪くなるが)風呂入って、別々に寝る...ちょっとまてそれはダメだ

言い方は悪いが、今日にかこつけて少しでも進展しなければいけないのだ


「なぁ」
「...なにぃ?」

あ、こいつちょっと眠くなってるな

「今日さ、一緒に寝ねぇ?」
「んぁ〜、うん...?」
「よし今うんって言ったな?うんって言った、よし決まり、行くぞ」
「ん?...んんん???」

少し頭の回転が遅くなっている今しか一緒に寝る、なんてこと了解してくれねぇから今行くしかねぇ

気づきかけてる名無しさんの腕を引っ張って、湯たんぽで温まっている布団に引っ張り込む

暖かさによって、眠そうだった瞼がさらに眠そうに幸せそうにとろん、とする

その顔に理性を持ってかれつつも、おそるおそる、その細い、柔らかい体に腕を回す

抵抗はされなかったが、触られたことがわかったのか、じ、と俺の方を見た

そしておれは、その目線に耐えられなくなり、ぽつぽつとはなしはじめた

「今日さ、記念日だったじゃん」

耳元に口を寄せて、そう囁く

名無しさんの肩がぴくり、と反応する

「そだね」
「分かってたんだろ?」
「当たり前だけど...そういうのきにしないと思ってたから、忘れてると思ってた」
「いや、覚えてるわ
ま、それでさ、料理、美味かった」
「いつもより頑張った」
「ありがとな、えと、のぞみーるの番組についてはすまんかった」
「...大切な日なのに私よりほかの女か!って思ったのは否めない」
「...すまん
まあ、その、それで...」
「別に、怒ってないし...腹立ったのは、事実だけど」


そう少し頬をふくらませながらいうこいつは、テレビで見る女優やアイドルより、よっぽど可愛い、なにより、実際に触れられる
名無しさんの体に回した手に無意識に力が入る

「今日、なんで一緒に寝てるかって言うと、な?」
「...まさか...」
「いや、お前が嫌なら別に、そういうことはしない、でも一つだけ、一つだけ俺のわがままを叶えてほしい」
「...その言い方ずるいよ、わがままなら、私、拒否できないよ」
「あ、そうなの?じゃあ」
「軽い!!いきなり軽いんだけど!」

だって自分の言ったことがホントになるならそれしかねえだろ

「...キスしようぜ」
「きっ!?、い、いやえと、ちゅ、ちゅう..???」


こいつきすのことちゅーっていうのか
何か俺のツボが押された気がする

「そうそう、チューしようぜ」
「し、しようぜ...?それは、お願いじゃない...?」

そういえばお願いじゃなかったら断られるな、だからいま言ったのか

「いーや?ちゅーしたいな〜?俺のわがまま叶えてくれるんだよな?」
「ぬ、ぬぬ...」


俺の目と唇とを行き来する目線に、吹き出しそうになりつつも、首の後ろに手を回して、逃げられないようにする

「あ、う、ま、まって」
「...目、つぶらなくていいのかよ」
「う、うわ..」

とん、と柔らかい唇と重なった

きゅ、と結ばれてる唇を、舌でつつく、驚いて息を吸い込もうと開いた唇の間に、下を滑り込ませる

「ふっ!?むむ!?」
「ん、ふ..」

二人の吐息が寝室に静かに溶け込む
ヌルヌルする舌で、奥に引っ込もうとする名無しさんの舌をつっついて、おずおずと舌を出したこいつに、可愛いな、なんて場違いなことを思いながらも、一生懸命絡めようとしてくる舌に、異常に興奮する

「ん、んんぅ..む..むー!」

とんとん、と俺の胸を叩いて、息が苦しい、とアピールするが、それを無視してさらに続けると

「んぁっ、ふ、やら!」

口を大きく開くのでその分大きな声が出る

そのとろとろな顔を見てしまったら、またさらに続けたくなる気持ちはあるが、本当に苦しそうにしているのを見て、す、と唇から離した

わざと舌を出して、銀の糸が見えるように

そしてやはり見えたのか、繋がっていた銀の糸を見つけて、恥ずかしいようにそっぽを向く

「...私の知ってるチューじゃない」
「俺が作った」
「...す、すごいな..」
「どんな感じだった?」
「な、なんか、くらくらして、ふわふわして...うん...どきどきした」

幼稚な言葉しか使えなくなってしまったこいつの頭を少し撫でて、一歩どころか十歩ぐらい飛び越した気がするが、今回学んだこと、それは


こいつ、押せばイケる


という事だった







「もいっかいする?」
「も、もういい!」


次の章へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ