本棚

□きっと恋じゃない ヒラ
1ページ/1ページ

教室の隅で本を読みながら、中心に立っている背の高い、てかもう細高いうるさい人、ではなく、その隣でニコニコ笑っているヒラくんを、眼鏡をかけた細い目でバレないように見つめる

そして、思う

「かわいいなあ...」

...あれもはや男の子じゃないよ...。
妖精、もしくはエンジェル

などと、好きなように言っているが、決して私とヒラくんの仲がいいという訳では無い、仲の良さで言ったらこーすけの方が仲がいい
こーすけのツテで、幼馴染というヒラくんと喋ったことが、今思っている事の発端となったことだ


少し前に遡る

二年生になり、仲の良かった友達と離れ、新しいクラスに馴染めなかった私は、授業が終われば即帰る、という生活を過ごしていた

しかも、うるさい赤髪メッシュくんはいるし、グラサンマスクの見るから不審者君はいるし、個性が強すぎる人が多すぎて...本当に強い人が多すぎて、そこまでいう程でもないが不登校気味になっていたところを、久々に話したこーすけが紹介してくれたのが、個性があまり強くない(まあそれは後で裏切られるのだが)ヒラくんである

初めての会話は

「わ〜、同じクラスの!お話したいと思ってたんだよ〜」

であった。

自分を認識してくれていたことだけで嬉しかったのに、お世辞でもお話したかった、と言われれば、居所がつねづね無い、と思っていた私にとっては一発で落ちる魔法の言葉であった

それから気づけば、彼の姿を追っている

体育のとき、こーすけや背の高い人や、グラサンマスクくんと組んで、ぎゃあぎゃあと騒いでいるところ、たまに宇宙を作る時(作るのである)そんないろんな時に出る彼の顔は、可愛くて仕方がない



またある時、赤髪メッシュくんに話しかけられた

「なあ、おまえさぁ、ヒラのストーカーしてんの?」

「は?」

しまった、予想外の言葉すぎてつい強い言葉が出てしまった
何を言ってるんだろうこの人は、なぜ私がストーカーしてることになるのか

「えぇと、なんでそうなったんですか?」

非常にWhyである

「いや、だってさぁ、お前いっつもラーヒーのことみてるし、もしかしてって思って」

それで、どうなの?

聞かれて、そんなに私見ていたのか、という気持ちになる
だって傍から見てあいつずっと見てるなぁって思われてるってことは相当なのでは?
ということはもしかしてヒラくん自身にもなんであの子ずっと見てるんだろうとか思われてる...?!
ひえ、それは、ちょっと、かなり悲しい
一回話した程度で仲良くなれてるなんて勘違いにも程がありましたね...うん...

もはやどよん、どころではなく、ズドン、という感じの落ち込み方をする私にちょっと引き気味に

「まあ別に、話したいたら話していいと思うけどさ、なんか、見つめるだけってなかなかこわいぜ?」

怖いぜ...こわいぜ...コワイゼ...
セルフエコーが私の頭で流れる

それじゃあ、と言われ、同じクラスなのに別々で帰る
メッシュくん(キヨくんというらしい)が早いという訳では無い、私が極端に足を動かさないのだ

結局その日の授業は、全てうわの空で聞いていた
ここまで精神的にくるとはおもってなかた...

終業を知らせるチャイムの音がなり終わり、放課後になる

いつもなら誰よりも早く教室を出て、バスに乗る自分であるが
今日は、鍵締めまで残ることにした
理由は特にないし、ちょうどやらなければいけない課題が残っていた

課題が終わる頃には、空が赤黒になっていた

「あ、思ったより時間かかっちゃったかぁ...」

誰もいないので、一人つぶやく

もうヒラくんは帰ってるのかなぁ...無意識にそんなに仲が良い訳では無いヒラくんの位置について考えている
わるいくせだ、なおそう...

外を見ていると、がらら、と扉の開く音がした

なんとなく振り返ると、そこにはいまどこかなぁと考えていた人がいまここだぁ、と教えてくれた
つまりヒラくんが立っていた

「あ、わ...」
「あれぇ?名無しさんちゃん?なんでこんな遅くまで...?」

君が来るのを待っていたんだ








言えなーい!言えるわけなーい!
そんなこと言うために残ってたわけでもないし!

「あ、その、課題、終わってなかったから」
「えっ、あ〜国語の?」
「そ、です.,.」

つい敬語になってしまった

「なんで敬語なの〜」
あは、と軽く笑うヒラくんに、胸の奥がなにか掴まれたような感覚に陥った

「...?」

思わず、そんなつもりは無かったのだが、こて、と頭を傾げてしまう

それに気づいたヒラくんは

「どしたの〜?」

と、こちらもまた、こて、と頭をかしげる

「いや、なんかね、ヒラくんが笑うと、なんか、胸が、キュってなるというか...」

「んぇ〜と...?」

少し顔が赤くなるヒラくんは、よく分からなかったけどとりあえず可愛いなと思いました

「あのさ、もう暗いから、送ってくよ」



さて、今のは誰の言葉でしょう

「え、いや、俺おとこ...」

はい、そうです、私です
だってどう考えても襲われるのはこれヒラくんだから、守ってあげないと、という気になる

「いやいや、俺のセリフだからそれ!女の子に送らせちゃダメだって!」

「大丈夫だよ、多分ヒラくんよりも強いよ!」

むき、と自分の筋肉アピールをしてみる

そういえば思ったよりスラスラ話せてるなぁ、と意識を外に置いていたから、目の前まで迫ってきてたヒラくんに気づくのが遅くなってしまった

「ん〜」

といって、ふに、と私の腕を揉む

「ハウァッ!?」

「あ、ごめんごめん!」

ぱっ、と手を離すヒラくんの顔が急激に近くなっていて、ほんとに顔でお湯沸かせるくらい暑くなってしまったのだけど、それには気づかず

「んん〜俺の方があるよ!ほら!」

むき、とたしかに私よりもありそうな筋肉を見せてくれる、また可愛いな、と思ってしまう

「いやでも、、ね、おくらせて!」

「あの、ていうかさ、普通に一緒帰ろうよ、どこ?おうち」

「あ、学校出て左の...」

じゃ俺も一緒だべや〜と返すヒラくんにそれ以上何も言えず、結局一緒に帰った



その間、隣を歩いているヒラくんと話していると、なぜか胸が、締め付けられるけども、やはりなんでなのかは分からなかった






後日こーすけに尋ねてみると


「おまえ、そ...それは..おまえ....」

と言われるだけで、結局何かわからなかった







いつかきっと気づく時まで
次の章へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ