本棚
□風邪ひきました ヒラ
1ページ/1ページ
うぁ、と熱さで頭がくらくらしながら
今日会うはずだったヒラくんにLINEを送る
風邪ひいた、今日遊べない、ごめん
と
あとは色々会社や上司に連絡を入れたあと、私は倒れるようにベッドへと戻った
しん、と静まり返った部屋の中に響く雨の音は妙に不気味で、更に寂しさを感じさせるものだった
なんとなく、興味もないテレビをつけて、最近の話題はなんちゃらかんちゃらグループの〜なんて、(偏見だが)四十代後半の好む話題が流れていた
番組を変えるが大体は同じような内容でテレビの中であははは、と同じような笑い声が響く
そんな声でさえ、私の寂しさを助長させた
つまらない、と思って、テレビを切る
今日は本当だったら、ヒラくんと一緒に遊んで、家でゲームして、ヒラくんの天然なボケを聞いて、一緒に寝たりして...と、今日考えていた計画を、残念な気持ちと一緒につらつらと考える
考え事をしていた頭を休ませると、耳に痛い雨の音
「さみしいなあ」
遠くから来ていた睡魔に誘われながら、部屋に一つ言葉を残した
起きたきっかけは、トントン、と、玄関を叩く音
少しふらつく足元に気をつけながら、覗き窓から外を覗く
その場所には、少し雨に濡れたヒラくんが立っていた
自分がモコモコなパジャマを着ているというのも忘れて、急いで鍵を開けて
「ど、どうしたの!?」
「あ、わぁ、おはよ〜」
「あ、うん、おはよう...?んん?えと、そうじゃなくて、な、なんでいるの?」
ちょっとどこかズレている会話をしたあと、当然の疑問をぶつける
「え、風邪引いたって聞いたから、何が欲しいとか、LINEで聞いてたんだけど、多分寝てたのかな?それで、返事かえって来なくて、倒れてたりしたら大変だ〜と思って、とりあえずはフジに風邪に効くものとか、必要なものとか聞いて名無しさんちゃんに持ってきたの」
つらつら〜と来てくれたの理由を話す
いきなりだが、私とヒラくんの家の場所はそんな近くはない
なのに、私の為を思ってここまで来てくれたのか、しかも色々持ってきてくれて...
というか、いつまで部屋の外で話しているのだろう
「ご、ごめん、上がって!雨降ってるし!寒いし!ああ、でも!わたしの近くには寄らないように!移したら嫌だから!」
「あ、いいの?ありがとう〜
大丈夫だよ〜俺体強いから〜」
お邪魔します、とヒラくんが私と部屋に入る
いつもから片付けててよかった...
私が椅子に座ろうとすると、まって、とヒラくんが止めた
「え?どうしたの?」
「風邪なんだから、寝てなきゃダメだよ〜」
ニコニコ笑いながら、私をベッドに寝かせようと、動いてくる
しかししかし、今この働いてない頭とそこそこ疲れている体がもう一度ベッドに沈みこんでしまったら、せっかくヒラくんが来てくれたのに寝てしまう
それが嫌で、いやいや、とつい頭を振ってしまう
「やだやだじゃない、ほら寝て〜」
たまに出るヒラくんのお兄ちゃんモード
それに私は弱い
判断も鈍っていて、このままヒラくんに何もかも任せてたい気持ちになる
このままじゃ迷惑かけるなぁ、と思っていたら
「迷惑じゃないし、と言うかむしろ迷惑はかけてほしかったり〜」
何も言ってないのに...
結局ベッドへと寝かされてしまい、そのままぽんぽんと、あやされてしまう
風邪移るよ
いいよ
きついよ
いいよ
ありがとう
いいよ
眠いながらになにか伝えて、あやされたまま眠りについた
静けさはなくなっていた
「あ、え?ヒラくん?おはよう」
「おはよ〜」
「あ、そうか、昨日...ありがとう」
「ううん、いいんだよ、可愛かったし」
「...なんかしちゃった?わたし...」
「えーとね、寝る時に、大好きヒラくん...みたいな事言ってたべ?」
「なにそれはずかしー!!!やだ!!!」
「それだけでこちらこそありがとうだった」
「うわー!はずかしー!」