本棚
□ほめて! フジ
1ページ/1ページ
テストで100点取った、褒めて欲しい
徒競走で1位になった、褒めて
一人でお兄ちゃん待ってたよ、褒めて欲しいのに
お兄ちゃんは
「すごいね」
って
違う、凄いね、じゃないの、頑張ったねって言って欲しいの
よく頑張ったねって、お兄ちゃんのおっきい手で撫でて欲しいの
でもお兄ちゃんは、すごいねって言うだけ
なんでだろ
一層の事すごい恥ずかしいけど、褒めて欲しいって言うしかないのかな...
なんてことをずっと思っていて、たまたまフジ兄ちゃんのお友達のヒラくんが来ていた
「ヒラくん」
「ん?あ〜、名無しさんちゃん、こんにちは〜」
相変わらずにこにこと可愛らしい声で可愛らしく笑ってくれる...癒される...
どうしたの?って、何も言ってないのに、何かを察してくれたように聞いてきてくれる
「あのね、えーと、その、褒められたいな〜、と...」
「ほぁ...えーと、フジにだよね?」
「いえすいえす」
んん〜と、唸っているヒラさんの隣に座って、同じく、んん〜と、唸ってみる、ちょっと楽しい
後ろからかかる声
「なにしてんのおまえら」
お兄ちゃんのご登場であった
「お兄ちゃん」
「フジ〜」
とそれぞれ返答する、ヒラくんの隣に座っている私を見て、少し不機嫌そうにまゆを顰めて、もう一回何してんの?って聞いてきた
「えっとね〜名無しさんちゃんが、フジにどうやったら褒められるかなって考えてた」
「褒める...?褒め、てるべ?」
「え、え、褒め、褒められてるって言うか...」
何?という思いがこめられている、目線がサングラス越しに私に向けられているのがわかる
その目線は苦手です、私を、お兄ちゃんが見ていると思うだけで、私はもっと褒められるように頑張らなきゃ、って思っちゃうから
お兄ちゃんは悪くないけど
「フジフジぃ〜、そんなじっと見つめてたら名無しさんちゃんも困るって〜」
「ん、あ、そうか...」
私から目線が外れるのがわかる、その瞬間に自然と肩に入れていた力が抜ける
そうして時間が経っていき、結局ヒラくんとどうしたらフジに褒められるのか作戦の内容を練ることができなかった
ばいばい、と申し訳なさそうに言うヒラくんにたいして、大丈夫、と言うように家の外まで送っていった
その時にも不機嫌そうな眉毛のお兄ちゃんの、様子に気づきはしながらも、なんでなのかは分かってなかった
リビングで、二人きりになった
他愛ない話はした、ヒラくん相変わらず面白いねぇ、とか、お兄ちゃんのベースかっこよかった、とか
途中からは私の願望が入っていった
「お兄ちゃん、テストで100取れたんだよ」
「へぇ」
「それでね!走るのでも1位が取れたの」
「ほ〜ん」
「それ、で...」
「...」
さぁ、私たちの会話はここで終了です
それじゃあわたし、部屋戻るね、といつもの通りの会話の最後に、意図してない涙声が出てしまった、ズッと鼻水をすすってしまった
私はお兄ちゃんに褒められることで、認めてほしいんだと思う
すごいねとかじゃなくて
「ねえ、名無しさんはさ、なんて言って欲しいの?」
「え?」
「俺がなんて言えば、満足してくれる?」
そんな言い方で、言ってくれることをしてくれるのは嬉しいけど、それは、言ったことしかやってくれないってことだけど、でも、褒められたい、褒められたい気持ちを抑えられない
「お、お兄ちゃんに、」
「うん」
「頑張ったねって、言ってもらって」
「うん」
「お兄ちゃんに、頭、なでてもらいたい
凄いね、とかじゃなくて、私が何かをとったことじゃなくて、私がそれをとるために頑張ったことを褒めて、欲しい」
とてつもなく恥ずかしい気持ちです
お兄ちゃんは、うんうん、と、珍しく真面目に頷いている
そして、こっちを向いて
「じゃあ、はい」
ぽんぽん、とソファーの自分の隣の席を叩いた、座るように、という意味であろうか
てっきり前に座れ、と言うと思ったが、勘違いでした
「えーと、じゃあ、失礼、します」
「うん...。テスト、100点とったんだよね?」
「う、うん!」
「100点取るために、勉強したんだよね?頑張ったね、それに競争も、色々、頑張ったね、偉いよ」
そう言いながら、頭に手を伸ばすお兄ちゃん
その手はおそるおそるという感じで、つい私は、その手に頭を寄せてしまった
撫でられる、と言うよりは、撫でられに行った、という感じであり、私がリクエストしたことを言ってくれただけ、という感じだけど、それでも、ずっと望んでいたことが叶うって言うのはこんなにも嬉しいことなんだ
知ることが出来たこと
それが何よりも嬉しい
「ありがとうお兄ちゃん」
「いや、なんか、これからも何かあったら、褒める、から」
「じゃあとりあえず今から食べようとしてるご飯は私が作りました」
「それは褒めるというよりありがとうという感謝の念ですねありがとう」