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□風呂上がり キヨ
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彼氏の風呂上がりって、なんでこんなにドキドキするんだろう

いつも少しふわっとしているキヨの髪は、水を被ったことによりペタンとしていて、いつもはカッコイイ要素が強いのに、少し幼さを感じさせて、可愛い、なんて思ってしまう

色が白いから、火照った肌の朱色が目立つ



ってなんでこんなにじっと見てるんだろ...しかもこれってふつう彼氏に思われたいことなのでは

でもでも、自分の体は、色、白くないし、きつい顔立ちしてて、口調も可愛い訳では無いし、まあそれはキヨのせいだと言えるけど、口調移っちゃったけど、仕方ないけど!

「なぁー」
自分、そんな風に思われてたりとか、するのかな
魅力とか、あるのかな...
「おーい?」
キヨの好きなアイドルや女優さんとは違って可愛い訳では無く、魅力もあるとは思えない。
「あれ、あのー??」
悶々と考えていて、近くに来ていたキヨに気づくことが出来なかった

「おいって!」
「うぇい!?」

弾かれたように上を向く

ぽた、と頬に落ちてくる水がキヨの髪から滴ったことだとは気づけなかった

「さっきから呼んでんのに全っ然気づかねぇから耳おかしくなったのかと」
「私が耳おかしくなったらぜってぇキヨのせい」
「はぁ!?そんなこと言う!?」

かっわいくねぇー。

いつも言われる言葉、いつもなら酷い、で終わるのに

なんだかなぁ、ほんと、間が悪い


「どうせかわいくないですよー...」

聞こえないように、聞こえないようにそっと呟く

「んぇ?なんか言った?」

「いや?キヨの耳こそおかしくなってんじゃないの?」

「んだとぉ!」

普通に話してて、楽しい

なら友達でいいんじゃない?なんでこんなネガティブになってんだろ、でも本当に思うんだよね、面白おかしく話してたら、それでいいんじゃないかって

ひとしきり笑いあって、はふ、と肺に溜まった酸素を吐き出して、それが覚悟の決まったタイミングかのように

「キヨ、友達にもどろ」

「..................は?」

たっぷり間隔をあけて、一言

は?

だって、その顔が可愛くて、少し微笑んでしまう

微笑んだ時の顔そんな怖かったのか、ひゅ、とキヨが息を吸い込むのがわかった

「だ、って、なんで?今、普通に、しゃべって」

キヨの声が迷子のように震えていた

「いや、なんか、別に彼氏彼女の関係じゃなくていいんじゃないかなって、普通に話してて楽しいし、彼氏彼女っていう関係が逆に邪魔になる時もある気がするし」
「そ、んなのない!」
「あるって」

例えば、キヨの友達が来た時とか、たまたま私が家きちゃってて、でも撮影するから、邪魔になっちゃって、でもそんなの言えないから、後々にとることになっちゃう、空気読んで帰るけどね

「でも、なんでいま、え、おれ、なんか、した?」

びっくりした時とか、たまに出る、ら行の発音が子供みたいになる
それ好きだなぁ

「とくになんも、なんか、う〜ん?一方的なまあ私が悪いんだけど、こんなふうにキヨと付き合ってて、でも、私そんなに魅力あるとは思えないし、キヨの好きなタイプとは違うし...間が悪いっていうか」

キヨが、わるいわけではないよ

っていい終わろうとして瞬間に天井とキヨの顔が視界をすべて覆った

また、ぽたぽたと私の頬に落ちてくる水

「今、自分に魅力がねぇって言ったか?」

いつもより低い声

「は、ぇ?」

少し、怖い

「あのな、言うけどな、魅力がないやつと、俺が付き合うと思うか?
手出さないように気をつけてる俺の気持ちがわかってたからそんなこと言うのか?」

溜め込んでいた気持ちを吐き出すように、私の肩をぐ、と押して
その痛みに私が顔を顰めたのを確認した途端込めていた力をはっとしたように抜く
置かれたままだけど

また、ぱたぱたと落ちてくる、こんな状況なのに、まだ髪の毛かわいてないのかな、なんて呑気な事考えてしまう
口の端の方に落ちてきて、唇を濡らす
その味は塩っぽかった

上をじっと見ると、暗くてよく見えなかったけどキヨが涙を流している

「襲ったりしたら、嫌われるだろうし、その通り全部しっかり遊べる時間なんてないし、でも、そんなふうにがっついたりするのも、嫌われそうで怖かったし、全部、全部お前に嫌われたくなかったから、でも俺、好きだから、名無しさんのこと、好きで、」

だから、男友達のようにして、そんなこと考えている自分を振り切ろうとしていた
つまりこういう事か、言ってることなかなかに支離滅裂で、よく分からなかったけど

ごめん

「キヨ、キヨ、ごめん」

「風呂上がりとか、お前、顔少し赤くて、可愛いから、俺の顔見られてたらどうしようとか考えて、下の方向いてたし、上向いて話すのも可愛くて」

「えっあ、まって、ちょ、キヨ?」

「ソファーで隣座られた時なんて、髪から俺と一緒の匂いして、めっちゃどきってしたり、たぶんあったかいからすぐ眠くなって俺の肩に頭置いたりする時とか」

ちょっと待ってくれそんなこと思ってたの
てかなんの時間これ恥ずかしいんだけど

「ちょっと、キヨ?」

「お前寝てる時俺の顔見て寝るからキス顔に見えたりお前の胸意外にでかくて、俺の腕に当たった時とか、俺変に反応しちゃって、勃ったりした時とかあるし」

「待てこら普通になってるな!?」

「あっ、バレた」

シモい話を始めたら戻ってる時だ

「まあでも嘘は言ってねぇ」

「勃ったとかの話は聞きたくなかったなぁ...もうキヨの隣座らないわ...」

「いやいやもいっかい寝た時のんぅ、みたいな声出してくれていいんだけど?」

「はぁ、ないわ、てかなんか、私そこそこ真面目な話してたはずだしキヨも真面目に返してた気がするんだけど?」

泣いてませんでしたっけあなた

「あー?あー...なんか、どうせなら友達に戻れない関係になろうかなって、ゲスい考えになってたっていうか」
「はい?」
「いや、今まで思ったこと全部言って、嫌われるくらいになろうかなって」
「はぁ...?」

つまりこの肩に置かれている手は逃がさないための..?

「キヨさん?あの、手を...」
「いや、離さないけど...」
「え?」
「え?」

てんてんてん、と無言の私の抵抗が始まった




かのように見えた。

細いとは言えキヨは男で私は女で、ジタバタしても全然動いてくれない、しかもそれが面白いと思ってるのか、キヨはにやにやと私の必死の抵抗を見ている


は、腹立つ..!


「あれ、もう抵抗しねぇの?」
「抵抗したらキヨが、よろこぶ」

「たしかにその通り」

じゃあ失礼というように、する、と私の服の中にキヨの冷たい細い手が入ってきた
なんで風呂上りなのに冷たいんだよ!と思ったが
そう言えばさっきまで冷たい飲み物持ってたな、という思い出に繋がった

「ひァっ!ぅ..冷たいなこら!」
「...あっ、勃った」
「は?!」
「いや、最初の喘ぎが可愛くて」

しかも俺風呂上がりだから血流良くて〜
聞いてないことをペラぺラと話す

「ゃ、やだって、ちょっと、まって」
「嫌だはひでぇな」

するすると私の身体を細い手が撫であげる

「ひぅっ、うぇ、待ってよねぇ...」

違う、これは生理的な涙だ

「あ、ぇ、泣いてる?」
「泣いてない!」

はぁ、とキヨが私の胸に頭を乗せる

「なんでそう、いつも煽るかなぁ...」

だから俺はいつも我慢して、ブツブツとなにか繰り返している、それを見て私は

「ねぇ、キヨ、もう終わり?」

言葉の選択を間違えた

「...それは、」
「間違えた!!!違う!!あっ、待って!」
「なるほど、許可は、頂いた」

キヨの手が私のブラジャーをたくしあげた

「別れ話みたいな話になったけど、こうなったら絶対に逃がさないようにしてやるからな」



そう耳もとで囁かれたら、何も出来なくなっちゃって、風呂上がったのにまた風呂に入らなきゃいけないな、とそう思った












「腰、痛い」
「風呂入れてやるから...あ、風呂で第2戦は?」
「ほんとに怒るよ」
「ご、ごめん...」
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