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□ここ、私の Ver. hr
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さむ、さむ、うっ、とブツブツ言ってる私は傍から見れば相当な変人だろう、まあどうでもいいのだけど
いつもみんなが集まってる部室に入り、うぃす、こんちゃ、とあいさつも程々に、お湯の沸いてるケトルを持って、私専用のコップの中にココアの粉を通常より多く入れ、かき混ぜるのは少なめに、最後に残った甘い甘いほぼ粉のココアを飲むための布石である、なんて、ちなみにそんな頭いいようにいうことではない
そんなふうにして出来たココアを持ちながら、こたつの中でぬくぬくとしているヒラの隣を当たり前のように取る
さむ、さむ、うぅ、と鼻をズビズビさせながら座ろうとすると、もつよ〜とヒラが私のコップを持ってくれた
多少狭くても、特に動いたりしない、近い方があったかいでしょう?
いつもの通りに座って、ヒラの暖かい肩に頭を置いて、眠気が襲ってくるのに耐える
そんな姿を見て、フジさんがまたか、というように一言
「いつも近い、ほんと近すぎるべ...」
呆れた声を出した
「だって、近い方がぬくいし〜...」
と、ヒラが口を動かすのがめんどくさいように答える
ちなみに傍から見れば私は寝てる
声だけは聞こえているって感じですね、目を開けるのがめんどくさいです
「見ててあったかいからいいけどさぁ...」
「どうも〜、あのな〜フジ、名無しさんね、すごいいい香りするんだべ」
「え、なにそれ」
「なんか、女子の香り?でも、なんか、違うかも、おれにとってすきな香り」
「そんな、知らねぇよ...」
いや私も知らなかったよ...
そんなこと思われていたとは
なんか、なんかそう聞くと、自分の匂い嗅がれてるみたいで、なんか、言葉に出来ないこそばゆさが...
少し距離をおこうと、寝返りうったふりすると、くい、と肩を引っ張られるのに気づいた、そのふとした時に香る、多分ヒラの香り
あぁ、これかぁ、これは、好きになるかも
ぐりぐりと、頭をヒラのほうに押し付けて、香りを胸いっぱいに吸った後には、あやす様に背中をぽんぽんされていて、眠気が襲ってきた
そのまま寝てしまいましたとさ!
「フジぃ〜、さっきねえ、名無しさんがね、ぐりぐりって頭押し付けてきてね、もう俺どうしようかと思ってさぁ、背が近いと嬉しい...」
「うっせ、しらねぇよ、背が同じくらいじゃないからな、肩に頭が乗らないと思うし」
きっとみんな知らない、背が同じくらいだと嬉しいことがあるのを、例えば、背が同じくらいだと目線が同じだから、名無しさんの顔が良く見えるんだ、少し前髪が長いけど、睫毛がながいことも、くりくりした目も見えて、隣を通りすぎた時に、髪からシャンプーの香りが漂ってきて、その時くら、ってする気持ちも
まだ俺しか知らないんだ