君ありて幸福
□ラベンダー、はじめまして
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あまりにも広大な敷地を所有する学校であるが故、雄英高校は校門にたどり着くことすら苦労を強いられる。
加えて、自分の着ている服は黒一色。
夏の炎天下においては、日差しの格好の餌食だった。首元の捕縛具による保温も相まって、容赦無い暑さに、汗が滴っていく。
イレイザーヘッドこと相澤消太は、頻繁に目薬を指しながら、自身が教鞭をとる学校へ向かっていた。
ヒーロー業と平行して教師という職をこなすのは楽なことではない。
授業の合間に要請があればヒーローとしての活動をする。季節や気候は関係ない。
必要な時に働くのが、ヒーローだ。
先ほどまでまさにその活動をしていたわけで。
かと言って、ヒーロー業を苦に感じているわけでは決してない。
ただ、USJでの戦闘以降、個性発動のインターバルが増加していることもあり、目を使えば使うほどに負担がかかることを僅かに、でも着実に感じている。
ただでさえドライアイだというのに、日に焼けたらまた目に負担がかかる。
苛立ちとともに短いため息をつき、今日何度目かも分からぬ目薬をさしたときだった。
「きゃっ」
短い悲鳴と共に、軽く柔らかい衝撃、ふくらはぎから太ももにかけての冷んやとした水の湿り気。
とっさに片手でその人を支える。
ジョウロがカランと音をたて、流れ出た水がアスファルトを染めていった。