・紅郎との日々
□くっつく
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「どした、嬢ちゃん。」
いつものように二人で飯を食った後くつろいでいると、蒼生が背中に覆い被さってきた。俺の首に腕を回し、すりすりと猫が甘えるように顔を寄せてくる。恋人の可愛らしい仕草に、俺は読みかけていた雑誌を閉じてちっこい頭を撫でてやる。
そこまでは良かった。蒼生は俺に頭を撫でられ気をよくしたのか、更に体重を掛けて俺の背中に密着してきたのだ。
「嬢ちゃん、念ため聞いておくが…他の男にこんな風に抱きついたりしてねぇだろうな?」
「ん?しないよ。」
なぁに?嫉妬?などと言いながらもどこか嬉しそうに笑う蒼生の無邪気さに、俺は更に不安になる。それどころか自分が今、目の前の男の「雄の部分」を刺激して誘惑してることに気づいてないのは大問題だ。気恥ずかしいが、こういうのは言ってやらねぇと分からねぇだろう。
「その…だな、背中に胸が当たってんの、気づいてんのか?」
ちらりと様子を窺うように振り向けば、案の定、蒼生は顔を真っ赤にしていた。
やっぱり気づいていなかったか。
いくらブラをしていようが着込んでいようが、女の柔らかいそれはすぐに分かる。大きさの問題ではなく、感触が伝わってくるのだ。ふにふにと押しつけられた胸は情事の光景を思い出させ、おまけにリアルな感触が掌によみがえるようで身体に悪い。この刺激にぐっと来ない野郎がいるなら拝んでみてぇくれぇだ。
蒼生はおずおずと離れると俺の隣に座り、顔をのぞき込んでくる。
「ごめん…い、いやだった?」
「いや…」
寧ろ嬉しいくらいだ。と言う言葉を何とか飲み込み、そんなことはねぇよ。と頬に甘いキスを一つしてやる。
「んふふ。大丈夫、抱きつくのは紅郎だけだから。それに紅郎ならいいでしょ?」
さっきまでシュンとしていたのはどこへ行ったのやら。ったく、嬢ちゃんは俺のこと何とも思っちゃいねぇんじゃねぇだろうなぁ。などと思い、俺は複雑な気持ちになる。
そんな悪い子には、ちょっくら仕置きが必要だ。無防備で、あどけなくて、可愛くて。でも身体は立派に女なわけで。
そういう無防備さを余所で出さねぇよう、きちんと分かってもらう必要がある…というのは半分建前だ。そういうことをしたら男を…俺を焚きつけるということを教える必要がある。ともかく俺は情けないことに我慢の限界だった。
俺は蒼生の腕を引っ張って床に押し倒すと、そのまま組み敷く。
「嬢ちゃん…俺も男だ。オオカミになりたいときくらいある。」
俺は蒼生の髪をよけて白い首筋をだすと舌を伸ばしべろっとなめる。そして抵抗できねぇよう蒼生の両手を押さえると、のしかかるように体重を掛ける。
「心配すんな。じっくりたっぷりかわいがってやるよ。」
わざと低い声で囁くと、蒼生は身体をぴくりと反応させた。
「こうなるって分かっててやったんだよな?」
「ちっ…ちがっ…っ!」
真っ赤になった耳にふぅっと息を吹きかければ、甘い甘いデザートの始まりだ。
題:くっつく