・うたプリ 中短編

□Monopolize
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「ほぅ、珍しいな。ペディキュアか。」

「うん、たまにはいいかなって思って。」

蒼生はそう一言告げると、再び足先に目を戻す。ボトルから出された刷毛からは、真っ赤な雫が今にも零れ落ちそうだ。塗りにくいのか、身体を二つに折るようにしながら、足に手を伸ばしていた。

「貸してみろ。俺がやろう。」

俺は蒼生を手近な椅子に座らせると、足元にひざまづいた。そっと足に手を添え赤い雫をたっぷりつけた刷毛を爪に滑らせると、無垢な爪は真っ赤に染まった。

「瑛一、器用だね。」

「これくらい他愛ない。全部塗っていいのか?」

「うん、お願い。」

何も疑わず、素直に願いを告げてくるのは蒼生の可愛いくもあり困ったところでもある。俺は素知らぬふりをしつつ全ての爪を真っ赤に染め上げた。

「ふっ。俺色に染まったな。」

「そういえば瑛一のカラーと同じだね。」

「なんだ…俺を意識して選んだんじゃないのか?」

「ん〜、なんとなく。かな?」

その一言で、心の奥底でなにかが沸き立つ。嫉妬…いや、違う。正体のわからない気持ちにモヤモヤしながらも、蒼生が意図して俺色に染まることを選んだのではないのは、面白くなかった。
俺は掴んでいた足を先ほどより高めに持ち上げると、足の甲にそっとキスを落とす。

「俺以外にさせるなよ。」

「まさか。私の足の甲にキスしてくれる人、瑛一しかいないよ?」

「それもだが…これは最高の眺めだからな。」

なんのことだかわからないという目をする蒼生の視線を誘導するようにずらせば、蒼生は勢いよく両手でスカートを抑えた。

「え、瑛一…!」

「胸元も無防備だぞ。そんなに俺を誘惑して…俺にどうされたい。」

くいっとサマーニットの深く開いた襟ぐりに指をかけると、綺麗に寄った谷間が見える。

「ちょ…伸びちゃう!ダメ!」

「こんなのを着て屈むな。スカートを履いているのに足をあげるな。無防備にもほどがあるだろう。」

「さ、最初から見てたの…?」

「当然だ。蒼生に奉仕する俺へのサービスだと受け取った。だが…気が変わった。」

俺は椅子の背に両手を付くと、彼女を見下ろすように顔を近づける。

「望みなら叶えてやろう。ただ…こんなに無防備な蒼生には、少しキツイお仕置きが必要だな。男を煽るとどうなるか…その身体と心に、嫌という程刻みつけてやろう。もう二度と、俺の前以外で魅惑的な色香が漏れ出さないようにな。」

俺は眼鏡を外すと、すぐさま顎を掬いあげ深く口付けた。舌を使い唇を何度もなぞり、口を開けさせる。

そうか…俺は【征服】したかったのだ。

蒼生が自らの意思で俺を選び、俺だけを特別だと思ってくれるよう、その意思でさえも欲しいと思っていたのだ。

今夜はもう、紳士的にはなれそうもなかった。

塗ったばかりのペディキュアより、今すぐ身体を繋ぎ合わせ、蒼生に俺を深く強く刻みつけたいと思ったのだった。





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