・あんスタ 短編 

□花言葉 3−A
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過去拍手お礼 3−A 花言葉


「咲いた!咲いた!チューリップの花がぁ〜!」

「ちょっとぉ守沢!その歌そんなに気合い入れて歌ったらおかしいでしょ。チョーうざぁい。」

泉が悪態をつくものの、千秋にはその意図が届いていないというか…今日も通常運転である。

「実は今度近くの幼稚園でヒーローショウも含めたステージ依頼があってな!園児達と少しでも仲良くなろうと思って童謡を練習しているんだ!」

「おぉ!千秋さんは幼稚園に行くのか!呵々大笑!きっと楽しいぞ!」

「ノン!朝からうるさいのだよ。せめて歌うにしても野ばらなどにしたまえ。」

『でも宗君、懐かしい歌ね。子供の頃よく歌ったわ。ならんだならんだ赤白黄色ってね。』

こちらも通常運転…というか、やはり周囲と会話を成立させる気があるのかないのか…宗は千秋と斑のことなど歯牙にも掛けない様子で手元のマドモアゼルを見つめている。

「ふふふ、ちなみにチューリップの花言葉は色によって違うんだよ。」

いつから聞いていたのか、不気味なほどよいタイミングでがらりとドアを開けて入ってきたのは、生徒会長でもある天祥院英智だった。

「花言葉ねぇ。で、天祥院はその話題を持ち出すってことは知ってるんでしょ、その三色の意味。」

どんな意味なわけぇ〜と泉がイライラしながらも問いかけると、英智はにこにこと目を細めて楽しそうに答える。

「赤・白・黄色という歌詞に合わせると『告白・失恋・叶わぬ恋』という意味になるんだ。だからその後の『どの花見ても綺麗だな』っていうのは歌い手の悲痛な心情の叫びが込められていそうだよね。たかが童謡だけれど、なかなか奥深いと思わないかい?」

「うっわーげろげろ。久々に真面目に授業受けようと思って教室にいればこれだもんねぇ。ど〜してこんなにシビアな話聞かなきゃなんだか。あ、でも女の子に花を贈るときは気をつけなきゃ。」

薫は約束があるからとかなんとか言いながスマホを手に取ると、英智と入れ違うようにして早々とどこかへ消えていく。

「英智…お前なぁ…。まったく、度し難い。守沢、チューリップ全体としては『おもいやり』という花言葉もあるから、心配せず園児達の前で歌ってくると良い。しかしあまり元気が良すぎるというのも問題だ。隣のクラスにも迷惑が掛かるからもう少し落ち着いて練習しろ。」

敬人は何とか場を収めようとするも、すでに各々が勝手にやりたい放題となっている教室内では敬人の声は誰にも拾われなかった。

END



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