・うたプリ 中短編

□Eat every bit
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貴方を、食べてしまいたい。



そう思うようになったのは、いつからだろうか。
食べると言っても、本当には食べない。もし本当に食べてしまったら、蒼生は僕の目の前からは消えて無くなってしまうし、大好きな蒼生と温もりを分かち合うことだってできない。

俺はそんな寂しいことは望んでいない。でも、蒼生を独り占めできたらって……今日まで何度思ったことか。それくらい蒼生は魅力的で、自分なんかと恋人になってくれただけでも奇跡だって思ってるのに、最近の俺はどんどん欲張りになっていってる。

「瑛二、どうかした?」

こうやって俺を呼ぶ声も…本当なら他の誰にも聞かせたくない。

「…ごめん、蒼生が欲しくなっちゃった。」

「え…っ」

嫌ならやめる…その一言は出せなかった。どうしても、今日は蒼生が欲しかった。抱き寄せ、軽く唇にキスをする。嫌がるそぶりがないのをいいことに、俺は何度も角度を変えてキスを落とす。

「珍しいね、何かあった?」

「なにも。ただ、蒼生と繋がりたくて。蒼生が欲しくて…抱きたい。欲望が… 止められそうもないんだ。」

無遠慮だと分かりつつも、蒼生の胸に手を置き、指に力を入れる。時々押しつぶすように力を入れるも、恥ずかしいのか身を引かれてしまい感触が乏しい。

俺は蒼生の手首を掴むと、しっかり自分の体へ引き寄せた。少ししゃがむと、目の前に白い首筋に目が行く。

「え、いじ…?」


あぁ…美味しそうだ。


本当に、今日の俺は一体どうしてしまったのだろう。俺は蒼生の柔らかな胸の感触を確かめつつ、白く細い首筋に唇を寄せた。ほのかに甘い蒼生の香りがする。

痕を付けたら怒られてしまうだろうか。それでも俺は、付けたかった。甘い匂いごと味わうように舌を這わせ、甘く噛み付いた。


ああ…やっぱり俺は、蒼生を食べてしまいたい。






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