・うたプリ 中短編
□つなごう
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つなごう 美風藍
私は仕事終わりに待ち合わせた藍と、色とりどりの葉が舞い散る夜道を歩く。日も暮れて寒さが身にしみる季節。私はコートに薄手のマフラーしか身につけてない事もあり、夜の秋風にさらされて冷たくなってきた手をすり合わせる。
「寒いの?」
ちらりとこちらを伺う藍は心配と言うより興味や好奇心に近い瞳を向けてくる。人がこのくらいの温度でどのような反応をするのか、知識は持ち合わせていても実際のデータは常に取りたいのだろう。
「ちょっとね。でもこうすれば温かいよ。」
私は藍に見えるように両手を口元に持ってくると、はぁーっと温めた息をかける。さすがにまだ息は白くならないけど、それでも十分温かさを感じる。やっぱりもう手袋も出さないとダメかな…なんて考えていると、隣から一段階重く息を吐く音が聞こえた。
「ねぇ、蒼生、この時期は夜になると寒暖差の影響でより寒さを感じやすいってこの間も言ったよね。いい加減手袋してくるなり持ち歩きなよ。」
そう言いつつも、藍は私に手を差し伸べてくれる。私は素直にお礼を述べると、差し出されたその手を取る。藍の細い指を掬い取るように指を絡ませると、藍も深く握り繰り返してくる。ほんの一瞬の出来事。でも私はこの瞬間が好きで、そのために手袋をしていない…なんて、藍は気づいているのだろうか。
「冷たいね。ボクには蒼生が意図的に身体を冷やす意味が理解できないんだけど。」
「だって……藍とこうしたいんだもん。」
「はいはい。ボクはあんまり熱量使いたくないんだけど。」
そういいつつも藍はコートのポケットに繋いだ手を入れてくれる。より密着する体勢にくすぐったさとうれしさが混同して、ついつい頬が緩んでしまう。
「あのね、温かいから繋ぎたいんじゃないんだよ。心が近くなるから繋ぎたいの。」
藍はどこか納得できないような、分からないような返事をしつつも、残りの道はずっと手を繋いでくれていた。
あと少しで部屋に着こうかという時になって、藍はおもむろに口を開いた。
「ボクも…シタい。」
「手?繋ぐの好き?」
「そうだね。手はもちろんだけど、蒼生と繋ぐ行為自体好ましく思える。だから、はやくもっとシタい。」
「んん…?なんか違うような。」
「蒼生にしてはいい読みだね。」
藍はふふっと不敵な笑みを浮かべると、そのまま耳に唇を寄せて囁く。
「早く帰ろう。ボクの理性が振り切れる前に。」
「…藍は、自分でちゃんと制御できるでしょ?」
「そうだね。でも、だからこそ早くリミッターをはずしたいんだ。」
藍はまるで会話の内容とはちぐはぐな瞳を向けながら、鍵を開ける。
「今夜は冷えるから、いつもより激しくしないとかな。」
冷えた手はすっかり温まっていた。それどころかその言葉だけで、已に身体の奥にある熱が疼きはじめた。
END