再逢 −レトルヴァ−

□お日様の香り
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タキオンは何の目的もなく歩いていた。
マザーが停止し、ジョミーが帰ってきてからというもの、シャングリラは平和そのものである。

まあ、トォニィのジョミーに対する甘えっぷりは気に入らないが。
こうも四六時中ベタベタされるとうんざりだ。
俺だってジョミーともっと一緒にいたい。

今は200年前のあの冷たかったジョミーは本心でないと知っっているからこそ、
タキオンのジョミーに対する思いは再会と共に大きくなっていった。

気づけば、小さな広場までやってきていた。
子供たちはお昼寝の時間のためか、そこには誰もいない。

このままここにいる用もないので踵返そうとしたとき、目の端に何か赤いものが目に入った。
それは、広場の隅に植えてある木の陰から少しだけ顔を出している。

あれは…

タキオンはそろそろとその木に近づいた。
覗き込むと、その人はやはりそこにいた。

「何してるの?こんなところで。」
「やあ、タキオン。」

そう言ってジョミーはエメラルドの瞳をタキオンへと向けた。
ジョミーは木に寄りかかって足を伸ばし座っている。
その隣にトォニィの姿はない。

「珍しいね。ジョミーが一人だなんて。」
「会議室にほっぽって来たんだ。ああもずっとくっ付かれてちゃ堪んないからな。」
「ふぅん…。」

するりと、タキオンはジョミーの横に腰を下ろした。

「そう言うタキオンこそどうしたんだ?」
「別に?ただ何となくふらふらしてただけ。んで、なんかジョミーらしき人がいるからどうしたのかなーって。
ていうか俺まだジョミーがここで何してんのか聞いてないし。」
「あ、いや、ここ気持ちいいんだよ。心が安らぐって言うか…そう思わないか?」

ジョミーが一度遠くへ目をやってからゆっくり目を閉じた。
タキオンも習ってそうしてみる。
さわさわと微かな風が流れている。これが人工のものだとわかっていても気持ちいい。

「タキオン。」
「ん?」























ちゅ















































はいぃ?!



タキオンは、今一瞬何が起こったのか分からなかった。

俺、今ジョミーにキスされたのか?!

思わず自分の唇に手をあてた。
目の前では赤く頬を染めながら恥ずかしげにジョミーがこちらを見上げていた。
この可愛らしさは反則的である。
タキオン自身も顔が熱くなる。

「タキオン…。」

すっと伸ばされたジョミーの可愛らしい手がタキオンの頬を撫でた。

も、もう…っ!!

タキオンはジョミーを一気に押し倒した。

























































なーんてことになればいいのになぁ。


タキオンは風の心地よさにまどろみながら思った。
そう、キス以下はタキオンの妄想である。

タキオンは目を開けてジョミーを見た。
彼は未だ瞳を閉じ、気持ちよさそうにしている。
タキオンはそんなジョミーの肩に顔を埋めた。

「タキオン?」

ジョミーの身体がぴくりと揺れ、少し驚いたような声で言った。だがその声に拒絶の色は見えない。
深く息を吸い込んだ。暖かく、優しい匂いがした。
とても大きく強いものに包まれるような感覚に襲われ、安心感が全身を満たしていく。

「ジョミーはお日様の香りがするんだな。」

思ったことがそのまま口をついていた。

「え?何?」

ジョミーが聞き返した。
タキオンは少し頭を振った。

「…なんでもないよ。」


時が止まってしまえばいいのに…。

タキオンはこの時本気でそう思った。









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