再逢 −レトルヴァ−
□再逢 −レトルヴァ−
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ソルジャートォニィ率いるミュウ達は、マザー崩壊による混乱を抑えるために力を発揮し、各地で救援活動等を行っていた。
人間とミュウとの和解が成立し、お互いに手を取り合って生きていくことや、遺伝子を操作し人を生み出すことを禁止とすることが決められた。
地球政府からはミュウの居住区として惑星をひとつ空けるという案も出されたが、トォニィたちミュウはそれを断り、シャングリラで暮らしマザー破壊に努めるということになった。
しかし、広大な宇宙に散らばっているマザーを破壊していくことは容易ではなく、トォニィたちは苦戦を強いられていた。
なかなかマザーを見つけられない苛立ちがトォニィを端としてシャングリラ全体に行き渡り、ギスギスとした空気が流れていた。
SD体制前後での世代間の格差も時が経つにつれ増大し、トォニィは自分を不甲斐なく思う気持ちとみんなをちゃんと纏め上げ、導いていかなければならないという不安で押しつぶされそうになるのをなんとか保つので精一杯だった。
SD体制から200年後・・・
トォニィは定例会議を終え、部屋に戻ってくると、ベットの上にばたりと横になった。
なんとなくぼんやりとまわりに目線を送っても、この部屋にはなにもない。部屋はかつてジョミーがそうであったようにがらんとしていて、生活感というものがまるでなく、机やいすなどがぽつりぽつりと置いてあるだけだった。
トォニィはいつも付けている補聴器に手を伸ばし、ゆっくりと目を閉じた。
すると突如として急激な眠気がトォニィを襲い、そのまま眠り込んでしまった。
明るい陽の光の中に彼は立っていた。
『グランパっ!』
トォニィは愛しいジョミーを呼んだ。
『どうしたんだ?トォニィ??』
こうやって呼べば必ず笑顔で振り返って僕の名前を呼んでくれる。大好きなグランパ。
絶対的な安心感や安堵感がトォニィを満たした。
光に包まれているジョミーに手を伸ばした。
グランパ…
あと少し…。しかしそのとき、トォニィが彼の頬に触れるか触れないかのところで急に体が下へガクンッツ落ちた。周りがどんどん暗くなっていく。
足元を見るとぽっかりと大きな暗闇が広がっていた。深い深い闇だった。
嫌だ…っ!
サイオンを使って体を浮かせようとしても、不自然な力に押さえつけられ、何もできない。
嫌だ…怖い……助けて……っ!!
咄嗟に上を見上げると、すでにジョミーの姿はなく、かすかな光だけだった。
嫌だよ…僕だけを置いていかないで……一人にしないで!
トォニィの体が完全に闇に包まれた。
…ジョミーっ!!!
ツェーレンは人通りの少ない廊下を一人歩いていた。
ったく、なんであたしがトォニィをわざわざ呼びに行かなくちゃいけないのよ…
トォニィの部屋の前に着くと、苛々とボタンを押して、中にいるであろう人に呼びかけた。
「ちょっと、トォニィ!お呼び出しがかかってるわよ!」
いつもなら、「うるさいなぁ…そんなに大きな声で言わなくたって聞こえるし…。あーはいはい、わかったから今行くよ」とかなんとか言ってくるのだが、今日に限って返事は無かった。
一瞬部屋にはいないのかとも思ったが、部屋の中からトォニィのサイオン反応はある。仕方が無いので、テレポートして部屋の中に入った。
部屋に入ると、驚きの光景が広がっていた。ベットの上で補聴器に手を当てて寝ているのだ。
これは普通の人からしてみれば当たり前のことなのだろうが、トォニィに関してはその常識は当て嵌らなかった。
彼はソルジャーになって以来、ほとんど眠るという行為をしていないように思われた。何かあればすぐに対応し、昼夜問わず働いていたのだ。
この並々ならぬ様子にはじめのうちはみな心配して休ませようとしたが、何をしても言うことを聞いてく
れないので、仕事に何か差し支えるわけでもないし、もう周囲は諦めていた。
そのような訳で、寝顔を見るなんてことはツェーレンにとって子供のとき以来だった。
このまま休ませてあげたいという気持ちもあったが、かなり緊急の呼び出しだったのでそうも行かず、ツェーレンは仕方なくトォニィを起こそうと近づいた。
すると、悪夢でも見ているのだろうか、トォニィは苦しそうな表情を浮かべ、うなされていた。
あわててツェーレンは起こそうとトォニィを揺すった。
「トォニィ?!大丈夫?!!トォニ……」
「ジョミーっ!!!!」
ゴツッ……
かなり鈍くイヤぁな音が部屋に響いた。
いきなり起き上がったトォニィの頭とツェーレンの頭がクリーンヒットしたのだ。
「……っつ。いったぁ…」
「…たくなんなのよ…もう…」
ふと、二人の目が合った。しばしの静寂が部屋を流れる。
「…なんでツェーレンがここにいるんだ?」
あまりにきょとんとした目で聞かれ、ツェーレンはふつふつと怒りが湧き上がるのを感じた。
だか、その怒りを必死で抑え言った。
「シロエが呼んでたわよ。至急研究室に来てほしいって。マジであせってたから早く行ったほうがいいかもね。」
「あぁ…そうか…わかった。ありがとう。」
「どういたしまして。じゃ、あたしはこれで。」
そういうと、ツェーレンはぶつけた頭をさすりながらシュッっと消えてしまった。
ツェーレンがいなくなると、トォニィはまたベットへ倒れこんだ。
久しぶりに夢を見たかと思ったらこれかよ…
トォニィは大きなため息をつかざるをえなかった。
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