SS

□蒼の残り香
1ページ/2ページ


大事なことからだんだん薄れてくんですね…


ジョミーはブルーのベットの傍らに立っていた。
ブルーがいなくなってもうどれ位経つのだろうか。


『ジョミー、それは自然なことだよ…』


と誰かにそう言われた。


自然なこと―――

ならばそれに逆らうことを望む僕は…。


静寂がジョミーを包んでいく。


ブルー…あなたは…―――


ジョミーはもう聞くことのできない声を求め、補聴器に手をあてそっと目を閉じた。





貴方はいつもまっすぐ僕に言葉を投げてきた。

初めて会ったときもそうだった。
その言葉がまっすぐでとても素直なものだったから…
僕の世界が色を失くしていった。
それがとても怖くて、でもそれを悟られるのも嫌で…
飛び出した僕を貴方は迎えに来てくれた。
あの時、貴方の思いに触れたあの瞬間から僕は貴方について生きていこうと決めたんだ。

だけど僕はまだ幼かったから…
あれから貴方がくれた言葉に戸惑って逃げてしまった。

『ジョミー…僕の太陽―――。』

『愛しているよ、ジョミー…。』

貴方の淀みのない瞳と、その気持ちが重たすぎたんだ。
あのときの貴方の悲しげな表情は今も鮮明に思い出せる。

貴方の抱えているものを半分下さいと何故言えなかったんだろう?
そうすれば貴方は死ななかったかも知れないのに。
こんな思いをする事もなかったのに。

ただ、あのころ僕の足元はいつもぬかるんだ土の上に立っているようで、自分のことで手一杯だった。
ミュウのこと、人間のこと、ソルジャーのこと…
貴方の気持ちに応えられる自信もなかった。
やさしさを口にするにはまだ早すぎたんだ。
僕の気持ちをちゃんと貴方に伝えていれば安らぎに会えたのかもしれないのに…。

『僕も愛しています、ブルー…――――。』

何が怖くてきれいな景色を壊したのだろう…


貴方は今どうしていますか…?



ブルー…―――





→あとがき  
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ