Celestial keeper

□シャングリラ
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ジョミーたちが隠し通路から出た先はシャングリラの図書室だった。
さすが城の図書室というだけあって半端無い蔵書数である。

「まさかこんなところに繋がってるなんて…。」

ジョミーは感嘆と驚きの入り混じった声で言った。

「すごいでしょう?いざってときに便利なんですよ。」
「いざ?」
「ほら……国立図書館にない本を借りたいという申し出があったときにはここから…ね。」
「へ、へぇ…。」

ふふっと笑うリオを見て、ジョミーはなんだかリオの笑顔の裏に何か黒いものを感じた。

図書室を出ると、一人の綺麗な女の人が立っていた。
金の髪は床につきそうなほど長く、着ているドレスからかなり位の高そうな人であることが覗える。

「おかえりなさい、リオ。」

その人の澄んだ声が廊下に響く。
リオが軽く会釈をした。

「そして、よく来てくれました。ジョミー。」
「え…?どうして名前…。」

その人は柔らかな笑みを浮かべるだけで何も言わなかった。

「参りましょう。あの方がお待ちになっています。」

女の人はくるりと背を向け歩き出した。
リオもそれについて行ってしまう。
ジョミーとトォニィは一瞬顔を合わせたが、何も言わず前を行く二人の後に従った。

案内されたのはまるで神殿のような神秘的な部屋だった。
部屋の真ん中に通路があり、その両脇には水が湛えられている。

そこでジョミーたちを待っていた人は綺麗な銀髪と、対照的な深紅の瞳を持つ美しい人だった。
その人は優雅に座っていたイスから立ち上がると、ジョミーたちの方へ歩き出した。

女の人とリオがすっと脇へよける。
気づけばその人はジョミーの前にやって来ていた。

見つめられる瞳に、ジョミーは目が離せなかった。
すっとその人が手を伸ばし、ジョミーの頬を優しく撫でた。

「君がジョミーだね?」

ジョミーはこくりと頷いた。

「逢いたかった…っ。」

気づけばぎゅっとその人に抱きしめられていた。

「なっ…!」
「ちょっと、僕のジョミーに何すんのさ!!」

驚いたトォニィが慌てて二人を引き離そうとするも、それは叶わなかった。
先ほどまでとは違う酷く冷たい瞳がトォニィを射た。
その赤い瞳に見つめられとたんにトォニィは動けなくなった。まるで蛇に睨まれた蛙である。

「君は…誰かな?」

その言葉がトォニィに重く圧し掛かった。
色々と言いたいことは出てくるが、一向に言葉にならなかった。

「あ、あの!」

かの人の腕の中で固まっていたジョミーが小さな声を上げた。

「何かな?」

先程とは打って変わって優しい表情でその人は聞き返した。

「えっと、トォニィは僕の幼馴染で…一緒に逃げてきたんです。それと…。」
「ん?」
「苦しいので放して…頂けませんか…?」
「あ、ああ、すまないね、つい…。」

すっとその人は腕を放した。
するとすぐさまトォニィはジョミーを自分の方に引き寄せ、その人を睨み付けた。

「警戒されてしまったようだね。」

その人は困ったように笑った。

「今日はもう疲れただろう。部屋でゆっくり休むといい。部屋まではリオに案内させよう。」

リオがジョミーとトォニィの背を押した。
しかしジョミーはその手を払い、銀髪の君に詰め寄った。

「あ、ジョミー!」
「ちょ、ちょっと待って!あの黒マントの奴等は?!なんで僕を…。マム達は無事なの?!」

その人はジョミーを宥める様に頭を撫でた。

「君のお母さんたちは大丈夫だ。他の事については明日じっくり話してあげよう。だから今日はもうお休み。」

その瞳には有無を言わせぬ力があった。
ジョミーは仕方なくその人から離れリオのもとへ戻ったが、振り返った。

「あなたは…。」
「僕はブルー。ソルジャー・ブルーだ。」


このときはまだあんなことになるなんて思いもしなかった。

でももう直実に歯車は回りだしていたんだ…。







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