Schwarz Welt

□Schwarz welt 12
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結局、枢木スザクのクロヴィス殺害に関する法廷では、結局特派の証言は全く受け入れられなかった。
今、スヴェナの目の前のモニターには枢木スザクの移送の模様がライブ中継で流れている。

『まもなくです。まもなく時間となります。ご覧ください、この沿道を埋め尽くしたこの人だかりを!皆、待っているのです。クロヴィス殿下殺害の容疑者、名誉ブリタニア人の枢木スザクが通るのを。元イレブンを、今か今かと待ち構えているのです!』 

レポーターの女性が半ば叫ぶようにカメラに向かって喋っていた。

『あ、見えてきました。容疑者の枢木スザクがまもなくこちらに!』

「やっぱり、こんなのあんまりじゃないですか?」

今まで見ていた画面から顔を上げて、スヴェナの隣にいたセシルは憤慨した。
それに対し、ロイドは嗜めるような口調で返す。

「法廷が僕らの証言を取り上げないって決めたんだ。仕方ないよ。」
「でも…。」
「ねぇ、それって博愛主義?それとも人道主義?」

ギィっとイスの背もたれを軋ませながらロイドが尋ねた。

「こんなときに言葉遊びですか?!」

ロイドの言葉にセシルは抗議の声を上げるが、ロイドは何食わぬ顔で聞き返した。

「他にやることある?君だって知ってるでしょこういうケース。サミットであの人とも連絡取れないし、もう諦めるしかないよ。」

ロイドの言っていることは正しかった。
もはやこれではよほどのイレギュラーがない限り、状況の逆転はない。
しかし、それに納得のいくはずのないセシルは、眉を顰めたままライブ中継に視線を戻した。

『怨嗟の声が、怒りの声が上がっています。殿下がどれほど愛されていたかという証の声です!テロリストを裁く正義の声なのです!事件解決に尽力したジェレミア卿が自ら代理執政官として指揮を執っています。』

道路の真ん中をサザーランド6機を従えてゆっくりと進んでいく姿が映し出された。
しかし、それは突然減速し始め遂には止まってしまった。

『ん?何かあった模様です。止まりました。こちらにはまだ何の情報も入ってはいませんが…。あ、道の反対側から白い車が近づいてきます!あれは…あれはクロヴィス殿下の御領車です!』

ロイドはそのことに興味を引かれたのか、スヴェナとセシルが見ている画面を一緒になって覗き込んだ。
その白い車は、スザク達から5mほど離れたところで止まったようだった。
そのとき、ジェレミアの声が辺りに響き渡った。

『出て来い!殿下の御領車を汚す不届き者が!』

その言葉を合図に、白い車の運転席の上部の布が一気に燃え上がりそこから黒いマントに黒い仮面を付けた人が現れた。

『私は、ゼロ。』

声からして男だと思われるその人物は堂々と名乗り上げた。
突然のことにあっけに取られていたレポーターがその人の言葉を皮切りに再び実況中継を開始した。

『あ、何者でしょうこの人物は。自らをゼロと名乗り、護送車の前に立ちはだかっています。ゼロと名乗る人物は何者なのでしょうか…。テロリストなのでしょうか、しかし、そうだとしたらあまりにも愚かな行為です。』

『もういいだろう、ゼロ。君のショータイムは御仕舞いだ!さあ、まずはそのふざけた仮面を取ってもらおう。』

ジェレミアが叫んだ。
しかし、ゼロがそれに応じることはなく、代わりに車の後ろの部分の壁が落ち、中のものが剥き出しになった。

「あら。」
「ん?どうかした?」

スヴェナが漏らした言葉にロイドが顔だけこちらに向けて尋ねてきた。
しかしスヴェナは答えるよりも画面に映し出されたモノに釘付けだった。

そこにあったのは先日研究所から盗まれた毒ガスの容器である。
だが今それが健全な形を保持しているのはおかしい。
中に入っていたCCには外へ出たら適当に逃げるように伝えてあったのだから。
おそらくは張りぼてだろう。
ということは『ゼロ』と名乗る人物はあの中身を知っているはず。
もしくは空の容器を手に入れただけかもしれないが。

どちらにしろ、どうやらこの状況を逆転できるイレギュラーが登場したようだ。
スヴェナは高ぶる心を抑え平静を装うと、ちらりとロイドの方を見やったがすぐに画面に目を戻した。

「少し、状況が動きそうね。」

言葉と共にスヴェナの口角がほんの少し上がった。







  

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