Schwarz Welt
□Schwarz welt 10
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放課後になり、スヴェナは荷物を纏め教室を出た。
廊下にはこれから部活に向かう生徒が慌しく駆けていたり、談笑に勤しむ生徒たちでごった返していたりした。
そんな人ごみの中をスヴェナはするすると通り抜け、クラブハウスへと続く階段を下りていった。
生徒会長と名乗る人の命によりクラブハウスへと呼び出されていたのだ。
教材を受け取りに行ってたから着くのは遅くなっちゃったけど、まぁいいか…。
そうこうしている内に言われていた部屋の前までたどり着いた。
スヴェナがドアに近づくと、シュっと音を立ててドアが開いた。
中に入ってみると、そこは小ホールほどの広さがある部屋で舞踏会とか開けるのではないかと思うくらい、かなりしっかりとした造りだった。
およそクラブハウスとは思えない。
「あ!来た来た!こっちよー。」
スヴェナを呼びつけた張本人、ミレイ・アシュフォードが部屋に入ってきたスヴェナを手招きしていた。
そこにはカレンや、後その他知らない人たちも何人か集まっていた。
その中には彼、ルルーシュ・ランペルージもいた。
テーブルにはオードブルが並べられ、これからちょっとしたパーティーでもするかのようである。
「さて、それじゃあ人も揃ったし、始めるとしますか!」
ミレイが言った。
「うわぁー!じゃあ、スヴェナさんも?!よろしくねー。」
「俺、リヴァル!よろしくぅ!」
「ニーナ…です…。」
「ナナリーです。よろしくお願いしますね、スヴェナさん。」
よく分からないまま次々と自己紹介されたが、スヴェナは取り敢えず丁寧に言葉を返した。
しかし、それが仇となったのか、スヴェナには何の説明もないままである。
呆気にとられて茫然と立ち尽くしていると、ミレイがそれに気づいてこちらに来た。
「あの、ミレイさん…それで何で私はここに呼び出されたんでしょうか…?」
スヴェナの言葉になぜか皆の動きが止まった。
「んん?会ったときに言ってなかったっけ?今日からスヴェナは生徒会に入るのよー。」
「もぉー。会長ったらそういうことは言わなきゃ駄目ですよぉー。」
シャーリーに言葉にリヴァルがうんうんと頷いた。
「ほら、スヴェナは編入したばっかりで部活とか…わからないでしょ?ってことでおじいちゃんが是非入れてやってくれって。」
「は、はぁ…。」
理事長の孫娘がこの学園の生徒会長であることは知っていたが、こんな話は彼から一言も聞いてない。
しかし、あのルルーシュに近づける口実が出来るのだから好都合といえば好都合である。
「さて!まずは乾杯といきますか!」
そう言ってリヴァルがテーブルの下から取り出したのはシャンパンだった。
「シャンパン?!」
「生徒会自らそれはマズいんじゃ…。」
シャーリーが驚きの声を上げ、ニーナが遠慮がちに諌めた。
「まーまー、硬いこと言わないで…。」
ボトルを開けようとするリヴァルに、シャーリーが邪魔をしにかかった。
「駄目に決まってるでしょ!」
「いい、じゃんか…!」
ぐいぐいとボトルを取り合う二人。
そんな二人の声に、目の見えないナナリーは不思議そうな声を出した。
「あのー…。」
「はーい、ナナちゃんはこっちねー。」
ミレイが誤魔化す様にオレンジジュースの入ったコップを手渡した。
シャーリーの邪魔ににっちもさっちも行かなくなったリヴァルは、ぽかんとこの状況を見つめているルルーシュにシャンパンを放り投げた。
「ルルーシュ、パス!」
あっとシャーリーが声を上げたときには既にシャンパンはルルーシュの手中に収められていた。
「ルルも簡単に受け取らないのぉ!」
シャーリーはリヴァルから離れ、ルルーシュに突進していった。
巻き込まれたルルーシュはあまりにも急すぎたため、ついボトルをシャーリーの手が届かないように上へ持ち上げた。
それを取ろうとシャーリーが奮闘し始める。
スヴェナはそんな様子をぼんやりと見つめていたが、ボトルのコックが外れそうになっているのが目に入った。
おそらく、初めにリヴァルが開けようとしたので緩んだのだろう。
しかし、先ほどからの攻防でボトルがかなり振られているため、もし外れてしまったら大変なことになる。
スヴェナは注意を促そうと口を開いた。
「そろそろ止めにしないと、あぶな…。」
言い終わる前にコックはぽんっと言う音を立てて勢いよく飛び出した。
向かってきた小さなコルクをカレンは素晴らしい反射神経で手刀で払いのけた。
しかし、安心するのはまだ早い。
さすがにそこまで気が回らなかったのか、シャンパンがカレンに降り注いだ。
「…あ。」
そこにいたナナリーを除く面々はボトルから溢れ出るシャンパンがダラダラと流れ落ちるさまを呆けた様に見続けていた。
「どうかしました?」
何も知らないナナリーの声が妙に明るく響いた。