Schwarz Welt

□Schwarz welt 9
1ページ/1ページ

ルルーシュは小川の畔に立ち、水面に映った自分の顔を見て眉を寄せた。
まさか、カレンに対してあんなミスをするとは…。もしかしたら力がなくなったのか?
そんなことを考えていると、側を通りかかった先生がルルーシュに声を掛けた。

「おい、ルルーシュ。もうすぐ授業がはじまるぞ。」
「あ、はい。」

声を掛けてきたのは社会科の先生であった。
ルルーシュは浮かび上がった疑念を晴らすべく、力を使った。

「先生、今度の論述試験の問題、教えてくださいよ。」
「エディンバラの屈辱と、新大陸への遷都と、黒南戦争についてだ。」

この力、無くなった訳ではないようだな…とルルーシュは心の中で呟いた。
ルルーシュは再び力を使い、同じ質問を繰り返した。

「先生、今度の論述試験の問題、教えてくださいよ。」
「冗談言ってないでちゃんと勉強しろ!お前はやれば出来るんだからな。」
「はーい。」

先生はそのままスタスタと歩き去った。
やはり、この力は一人につき一度しか使えない。
この力に関してもっと学ばなければならないようだ。

ルルーシュが教室に戻ろうと歩き始めたとき、向こうからのんびりとこちらに向かってくる影があった。
今日転校してきたというスヴェナ・リグ―ルだ。

彼女は先程の授業に遅れて入ってきた。
まあ、転校初日に理科実験室なんてそう易々とはたどり着けないだろう。
リヴァルがこそこそと彼女について話しかけてきたが、聞こえないふりして全部無視した。
彼女が自分の席に向かうために横を通り過ぎた時、一瞬目が合った。
すると彼女は何故かニコッとほほ笑んだ。
正直なところ転校生などには全く興味が無いので、その時の頬笑みしか印象にない。

彼女は今その頬笑みを浮かべて小川を眺めながら歩いている。
だからすぐに認識できた。
視線に気づいたのか彼女は不意に顔をこちらに向けた。

「あれ?あなた…。」

彼女はきょとんとした表情で数回目をパチパチさせた。
ルルーシュはすぐに人好きの良い顔を作って友人用の声をだした。

「今日転校してきた人…だよね?どうしたの?こんなところで。」
「うん、小川がキラキラしてて綺麗だったから…。」

彼女はまた小川へ視線を落とした。

「そうなんだ…でも、そろそろ教室に戻んないとマズイよ?」
「え?もう、そんな時間?!」

彼女は急にアワアワしだした。
携帯を取り出し時間を確認している。

「ほ、ほんとだ…あ、でもじゃあなんでここに…?」
「ちょっと散歩してたんだよ。気持ちいいから。」

ルルーシュはいつものようにすっと嘘をついた。

「せっかくだから一緒に戻ろうか。」

ルルーシュは笑顔で訪ねた。

「いいの?」
「もちろん。来たばかりじゃまだ校内よくわかんないだろ?」

というのは建前で、この時間から行ったら確実に遅刻しそうなので、転入生に道を教えながら来たから遅くなった、という言い訳をルルーシュは使うことにした。
そんなルルーシュの考えを知らない彼女は感謝の意を述べると、ふんわりと微笑んだ。
あまりにも綺麗に微笑むのでルルーシュは思わず見とれてしまった。

「ん?私の顔に何か付いてる?」
「へ?あぁいやなんでもない!」

彼女の言葉にはっと我に返ったルルーシュは、慌てて平常を取り繕った。
な、何やってんだ俺…

「じゃ、じゃあ、行こうか?」

彼女が頷くと、ルルーシュは歩き出した。
チラリと彼女を盗み見ると、何故か嬉しそうに顔を綻ばせていた。

「何でそんなに嬉しそうなんだ?」

え?っと彼女がルルーシュの方に顔を向けた。

「あ、いや、その…ただ何となく嬉しそうだなって…。」

ルルーシュはしどろもどろになりながら言った。
少し、顔が熱い。
彼女がふふっと笑った。

「ちょっとだけイイコトがあったの。」
「良いこと?」
「探してたものが見つかるかもしれないの。」

彼女がこちらを見る目は心の中まで見透かすような瞳だった。
その瞳にルルーシュは心がザワザワと揺れるのを感じたが、しかしそんなはずはないと、湧きあがる感情を無理やり押し込めて笑顔を作った。

「そうなんだ、見つかると良いね。」
「ありがとう。あ、えっと…。」
「あ、俺はルルーシュ、ルルーシュ・ランぺルージ。ルルーシュで構わないから。」
「スヴェナ・スーシャです。私もスヴェナでいいからね。ありがとう、ルルーシュ。」

それからスヴェナから幾つか質問された。
初対面の人間がしそうなありがちなものばかりだったが、どこに住んでいるかについてスヴェナは強い関心を寄せてきた。

「あのクラブハウスに?あそこは確か生徒会の…。」
「あはは…まあそうなんだけど、色々と訳があってあそこに住まわせてもらってるんだ。」
「そうなの…私なんて家からここまでくるのに時間がかかるから羨ましいな。でも、あそこに一人で住むなんて寂しくないの?」
「ナナ…っ妹と一緒だから寂しくはないかな。お手伝いさんもいるしね。」
「でも、クラブハウスに住んでるなんて…一度どんなところか見てみたいなぁ。」
「あはは。」

もうこれ以上この話題をしたくないのでルルーシュは軽く流した。
また別の質問が飛んでくるかと思いきや、それ以後スヴェナは黙ったままだった。
顔は相変わらずどこか嬉しそうだ。
ルルーシュは再びギアスについて考え出した。

「あの、ルルーシュ?」

しかし、スヴェナの言葉でそれはすぐに中断された。

「ん?どうかした?」
「私、まだ学校を案内してもらってないの。その、もし、良かったら…。」

スヴェナが困ったような顔でこちらを見てくる。
ルルーシュははーっと心の中でため息をついた。
正直めんどくさい。
まぁだからといって断る理由が特にあるわけでもない。
そんな胸中を全く感じさせない笑顔でルルーシュは返した。

「あぁ、俺でよければ案内するよ。」
「本当?ありがとう!」

スヴェナが微笑んだ。ルルーシュもつられて笑った。

「あ、でも悪い、今日の放課後は無理なんだ。明日は…?」
「うん、平気。」
「じゃあ、明日に。」

そう言って二人は理科準備室への階段を上っていった。












    

.

[
戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ