Schwarz Welt

□Schwarz welt 8
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「…何か、用かしら。」

カレンが抑えてはいるけれど挑戦的な声で言った。
スヴェナの居る場所からは相手が誰なのかは見えない。
このまま立ち去っても良かったが、ここで出て行って妙な雰囲気になっても面倒なのでことの成り行きを聴くことにした。
スヴェナは再び背中を壁にあずける。

「質問に答えろ。」

どうやら相手は男らしい。
少し間が空いて、カレンが答えた。
その声は先程とは違い従順そのもの。

「っはい。」
「昨日、新宿でグラスゴーに乗っていたな?」
「はい。」
「どうしてテロを?」
「私は日本人だから。ブリタニアの血も半分入ってるけど…。」

学校にテロリストなんて学園になにか裏があるのか、それともただ鈍感なだけか…。
この学園はもっとよく調べてみる必要があるかもしれない。
少しして、カレンがはっと息を呑む声が聞こえた。

「…えーっと…私に何か?」
「いや、もう用は済んだ。」

立ち去るかと思われたその人は草を踏む音からして数歩歩いてところで立ち止まったようだった。

「そうだ、念の為に…。新宿のことは何もいうな。」
「え?新宿って…どういうこと?どうしてそんなこと言うの?」

カレンが訝しげに聞いた。
先程までの従順さはもうカレンにはなかった。

「教室に戻れ。」

相手の男が語気を強めて言った。

「あなたが質問に答えてくれたらね!」

険悪なムードがあたりを包み込んだ。
だが突然、一触即発の雰囲気を断ち切るようにして、上から声が降ってきた。

「ルルーっ!!カレンさーん!!次、理科準備室だよ!急がないとぉ!!」

声の方を見上げると、窓から大きく身を乗り出した長髪の女の子がこちらに向かって手を振っていた。

「やっべぇ、実験器具ださないと!」

ルルと呼ばれた相手の男は急に声をワントーン上げてその場を走り去った。
カレンは小さく舌打ちすると、気分を切り替えるかのように髪の毛を大きく振って中庭を後にする。
残されたスヴェナはふーっと長く息を吐いた。
あの「ルル」と呼ばれた少年…。
最後にちらりと垣間見た感じでは探している「彼」と条件が一致する。
黒髪に色白で細身…。
しかも先程のカレンの急な態度の変わり様も、少し引っかかる。
カレンと一緒に呼ばれたのだから同じクラスのはずだ。
だとしたら次の授業で確かめればいい。
ちょうどその時午後の授業開始を知らせる本鈴が鳴った。
スヴェナはポケットに入っている校内図を取り出し理科準備室の場所を確認すると、短くため息をついて走り出した。


遅れて教室に着くと、先生は転入生ということで快く迎えてくれた。
前からざっと教室を見渡すと、やや後ろ寄りの席に「彼」がいた。
ルルーシュ・ランペルージだ。
やはり先程の「ルル」はルルーシュのことだったのだ。
先生に指示され一番後ろの席へと向かう。
通路側に座っているルルーシュと目が合った。

―――見つけた。
この人に間違いない。

スヴェナの直感はそう告げていた。
あとはCCといることを証明する決定的な証拠を見つけるだけだ。
彼に向って小さく笑みを作ると、スヴェナの真意を知らないルルーシュは少しだけ眉を寄せた。
軍部に動きが無い限り、ある程度泳がせておく時間はあるだろう。

「キミの席はその左側だ。」
「はい、先生。」

一番後ろに着くと先生から指示が掛った。
スヴェナは作った声と笑顔で応え、学生らしい振る舞いで席に着いた。






  

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