Schwarz Welt

□Schwarz Welt 7
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翌日、スヴェナは東京租界に車を走らせていた。
昨日新宿であんなことがあったにも関わらず、こちら側は平和そのものである。

「気楽なものね…。」

そう呟かざるをえなかった。

目的地に着くと、スヴェナは理事室と書かれた部屋へ入っていった。

「失礼します。」
「おぉ、君がスヴェナ・スーシャ嬢ですな?」

優しそうな初老の男スヴェナを迎え入れた。

「はい、今回は本当に無理を聞いて下すって…。」
「はは、スーシャ家のご令嬢なら大歓迎です。この学園で困ったことがありましたらいつでも仰って下さい。」
「ありがとうございます、理事長。それでは、そろそろ授業が始まりますのでこれで。」

スヴェナは理事長にお辞儀をして部屋を出た。
スヴェナの目的地…それはそう、ここ、アシュフォード学園である。ブリタニアの学園にしては珍しく、東京租界にありながらも、割とオープンでイレブンとブリタニア人を徹底的に区別するような学校ではなかった。

教室の前に着くと、担任の先生と思われる人がドアの前で待っていた。

「君が編入生の…。」
「はい、スヴェナ・スーシャです。」
「そうか、そうか。では中にはいろうか。」

先生に先導されて、スヴェナは教室内に入った。ガヤガヤと騒いでいた生徒たちが慌てて席に着く。
教室が静かになったところで、先生が話し始めた。

「今日は新たに転入生が来ることになった。スヴェナ・スーシャ君だ。彼女は親の仕事の関係でここに編入することになった。だからみんな色々と教えてあげて仲良くするように。」

ここで先生は一旦言葉を切り、スヴェナの肩に手を置いた。

「じゃあ、自己紹介してくれるかな?」
「はい。こんにちわ。スヴェナ・スーシャです。どうぞよろしくお願いします。」

スヴェナはペコリと頭を下げた。

「席は…一番後ろの左端だ。」




昼休みになると、クラスの何人かの女の子がランチを一緒に食べようと誘ってくれた。
しかしスヴェナは理事長に呼ばれているからと嘘をついて断った。
CCと一緒にいた男の子を探しに行きたかったからだ。
目標はルルーシュ・ランペルージ。
同じクラスであるはずなのに教室にはおらず、先生も生徒もいつものこととして何処にいるかは知らなかった。
まぁ、彼で無い可能性もあるので、一応併せて他の候補者を見に行けばいい。
ただ今後の友好関係も大事なので、時間があったら後で行くと誘ってくれた子たちに言い、教室を出た。
候補6人の中でまず二人と会ったが、どちらも違った。
慣れない校内のせいで思った以上に時間を取られてしまい、気づけば昼休みも残り15分となっていた。
もう居ないだろうとは思いつつも中庭に出てみると、誘ってくれた女の子たちが蜂がどうのこうのと言ってきゃあきゃあ叫んでいる。
その中の一人の女の子が自分が通っている通路のすぐ脇の低木の裏に隠れこんだ。
確か彼女も同じクラスで、名前はカレン・シュタットフェルト…だったような気がする。
一応自分も蜂の餌食にはなりたくないので近くにあった柱に背をあずけた。
するとカレンがなにかぶつぶつ言っているのが聞こえた。

「こんなところに蜂だなんて…巣でもあるのかしら。」

柱の影からちらりとカレンを見ると、カレンは次の瞬間彼女の周りを飛んでいた蜂を手刀で叩き落した。

「…あ゛ー鬱陶しい!病弱だなんて設定にしなきゃよかった!!」

と吐き捨てるように言い、持っていたサンドウィッチにがぶりと齧り付いた。
どうやら見てはいけないものを見てしまったらしい。
蜂騒動も収まったようだしもういいかと壁から背を離そうとした時、カレンから少し離れた所からサク…という草を踏む音がした。







  

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