Schwarz Welt

□Schwarz Welt 5
1ページ/1ページ

スヴェナが参謀本部に入ると、クロヴィスは怖い顔でスヴェナに近づいてきた。

「スヴェナ!」
「殿下、ご機嫌麗しゅう存じます。」

スヴェナが恭しくお辞儀した。
顔を上げると、クロヴィスはスヴェナの肩をがっしり掴み、ぐらぐら揺らした。

「大変なのだ、スヴェナ!彼女が、彼女が…っ!」
「で、殿下落ち着いてください。ちゃんと喋って頂かなければわかりません。それに痛いです。」

クロヴィスは、はっとしたように揺さぶっていた手を止め、そして慌てて離した。

「す、すまん…。えっと、それでだな、お前のことだ、毒ガスがテロリストに奪取されたことは知っているな?」
「えぇ、その為にこの作戦を実行されたのでしょう?」
「実は違うのだ。奪取されたのは毒ガスではない…C.C.だ。」

スヴェナは何も言わなかった。
クロヴィスは言葉を続けた。

「本国に私が内密に彼女の研究をしていたことがバレては…。」
「皇帝陛下に何をされるか、わかったものじゃないですね。」

クロヴィスは俯いた。
そこへ、バトレーが近づいてきた。

「我々はどうにかしてアレを回収せねばならん。お前も力を貸してはくれんか?お前にとってもアレは特別であろう?」
「そうですねぇ…それは命令ですか?」
「我々が命令できる立場にないことは知っているだろう!それに――――。」
「えぇ、えぇ、そうでしたね。」

スヴェナはその場のピリピリとした空気とは裏腹にバトレーの言葉を遮るようにしてクスクスと笑った。

「正直なところ私としてはもう彼女は用済みなのですが…まぁ、良いでしょう。他ならぬ殿下の頼みですから。」

スヴェナはクロヴィスに向けてニッコリ微笑んだ。
彼がこういう言葉に弱いことをスヴェナはもう十分知っていた。

「おぉ!そうか、では早速頼んだぞ。」

パッと顔を綻ばせるクロヴィスはまるで子供のようだった。

「はい、殿下。」

スヴェナはクロヴィスとバトレーに会釈をし、参謀本部から出て行った。
スヴェナが出て行くと、クロヴィスはイスに座りため息を漏らした。目の前の画面では、ランスロットが次々とテロリスト達を潰していく。

「兄上にはいらぬ借りを二つもつくってしまったな。」

クロヴィスは再びため息をついた。


参謀本部から出ると、スヴェナは心の中で笑った。
どうやら計画は意外と順調に進んでいるらしい。
クロヴィスからの「お願い」によって堂々と行動できることになった。

スヴェナはロイドから借りたサザーランドを駆って旧市街地に出た。
調べた情報によると、毒ガスを発見した先遣隊の新鋭たちはある一箇所で全員交信が途絶えている。
スヴェナは取り敢えずそこに出向いて見ることにしたのだった。
街では軍による破壊活動は未だ続いていたが、ランスロットの活躍により、テロリストたちの暴動は鎮圧されていた。
おかげで難なくそこまでたどり着くことができた。
着いて見るとそこは倉庫のような感じだった。
サザーランドから降り、新鋭隊の死体に近づいてみると皆おかしな死に方をしていた。
全員が自らの銃で自殺している。
しかもその表情は笑みを浮かべ、恍惚ともとれるものだった。
辺りを見回してみると、新鋭隊とは離れた場所に別の血痕があった。
スヴェナはそばにしゃがみ込み、その血へ手を伸ばした。
血が指先に触れたとたん、スヴェナの頭の中に映像が流れ込んできた。

制服姿の少年…

銃を構える新鋭隊…

その少年の前に飛び出すC.C.…

頭から流れる大量の血…

契約……

映像が終わると、スヴェナは弾かれた様に後ろへ尻餅をついた。
頭が痛い…ズキズキする……。
スヴェナはふらふらと立ち上がった。
ここにC.C.がいたことは確かだ。だがあの少年は…?
映像を思い出そうとするが、頭痛が酷すぎてうまくできない。
回らない頭を必死で動かし辺りを調べたが、もうここには人の居る気配はなかった。
スヴェナはよろよろとサザーランドにもどると、長く息を吐き出した。
大人しくしていると、徐々に頭痛も治まり、頭が正常に回り始めた。
スヴェナは目を閉じ、先ほどの映像を思い返してみた。

まずあの少年はいったい何者なのか…。
制服からブリタニアの学生であることはわかるがなぜここに?
それにどうしてC.C.は彼を庇ったりしたのかしら?
少年に銃を向けていたはずの新鋭隊がなぜ自殺をしている?
少年や撃たれたC.C.はどこ?
それに契約……契約?!

もたれ掛かっていた座席からがばっと体を起こした。
スヴェナの中でピースが繋がっていくような気がした。

「…CCったらやってくれるわね。」

スヴェナはふふっと小さく笑うと、サザーランドを発進させた。






    

.

[
戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ