Schwarz Welt
□Schwarz Welt 4
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「あ…。」
医療用トレーラーからロイドたちの所へ戻る途中、隣でスザクが声を漏らした。
「ん?何?」
「あ、いえ、えっと…。」
スヴェナが視線を前からスザクへ移すと、何故だかスザクは少し焦った様子で、言い辛そうだった。
「もしかして…名前?」
何となくピンっと来たのを言ってみると、スザクはこっくり頷いた。
「はい、あの、何てお呼びすれば…。」
「ふふっ…私に対してはそんなに畏まらなくてもいいわ。自己紹介が遅れてごめんなさい。スヴェナ・スーシャよ。堅苦しいのは嫌いだからスヴェナで構わないわ。どうぞよろしく。」
「よろしくお願いします。」
軽く握手を交わすと、スザクは少し緊張が取れたようだった。
「スザク君、ナイトメアの操縦訓練で使った機体なんだったか覚えてるかしら?」
「確か…第4世代のものでした。ただ細かい機体名までは…。」
スヴェナはスザクからの言葉にすぐ返答できなかった。
まさかいくらイレブンだからといって、そんな旧世代のものを使っているとは思わなかったからだ。
「…スヴェナさん?」
「あ、あぁ、ごめんなさい。まさか第4世代とは思わなくて…。でもそうならその訓練機とランスロットではまずレスポンスが1秒以上違うわ。おそらく体感はそれ以上ね。」
「そんなに!…でも、ということはスヴェナさんもパイロットなんですね。」
「えぇ。ランスロットのテストパイロットも私だから、ロイドの言うとおり気になることがあったら何でも聞いてくれて構わないわ。」
「え?じゃあ今日は僕よりスヴェナさんが乗った方が…。」
「言ったでしょ?私はあくまでテストパイロット。だから…期待しているわ。」
そう言うとスザクは強いまなざしで「はい。」と頷き返した。
ロイド達のもとへ着くと、ロイドは通信機に向かって誰かと喋っていた。
「……いやぁ、そろそろ特派の作戦共同兵器を…。」
「今はそれどころではない!!」
通信の相手はまったく聞く耳を持たず、一方的にぶちっと回線が切られた。
「ん〜、困ったものだねぇ。あれ、スヴェナおかえりぃ。」
ロイドは通信機からドアの方を振り返った。
「ずいぶんな扱いなのね、特派は。」
スヴェナが呆れた声を出すと、ロイドも肩をすくめた。
「そうだねぇ。でもま、戦況がすっごいことになってるみたいだから大丈夫でしょ。」
ロイドが能天気にヘラヘラと笑うと、通信機から「ロイドっ!!」と声が飛んできた。
聞き覚えのあるその声はクロヴィスのものだった。
「はぁい?」
「勝てるか?おまえのおもちゃなら。」
「殿下、ランスロットとお呼びください。」
ロイドは丁寧な笑みを作ってそう言った。
もう次の瞬間には回線を切るボタンを押すという時に、クロヴィスは急に眉を顰めた。
「ん?そこに居るのはまさかスヴェナか?!」
「はい、殿下。」
どうやら画面の隅に映ってしまっていたらしい。
ばれない様にため息をつきつつロイドに代わり、スヴェナは前に出た。
「スヴェナ、貴様なぜそんなところに?!」
「色々と事情がありまして…。それで、何か御用ですか?」
「うむ、実は…。」
クロヴィスはそこで一旦言葉を切った。
「いや、ここで言うのは…。スヴェナ、すぐに私の元に来てくれ。」
「今すぐに…ですか?」
「そうだ、今すぐにだ!」
「分かりました。では後ほど。」
スヴェナは回線を切ると、今度は臆目もなくはぁっとため息を漏らした。
「急に呼び出しなんて…、どうしたんでしょう?」
セシルが心配そうに言う。
「何かしでかしたの?スヴェナ。」
一方ロイドは少し憐れんだような声だった。
「そうねぇ、覚えがありすぎて分からないわ。」
「それって…」
スヴェナの答えにセシルが思いっきり苦笑した。
「ふぅ、仕方ないから、行ってくるわ。ランスロットの始動が見れなくて残念。」
スヴェナは肩を竦めて言うと、スザクの肩に手を置いた。
「大丈夫、あなたならできるわ。」
そう言い残すと、スヴェナはロイド達のもとを後にした。
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