Schwarz Welt
□Schwarz welt 1
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よく澄み渡った青空の下、スヴェナは特派のPCを間借りして、新宿ゲットー殲滅作戦の模様を見ていた。
毒ガスが奪取されただけにしてはかなり大々的な作戦であったが、これではケリがつくのも時間の問題だろう。
せっかくの準備も無駄である。
つまらない。スヴェナはそう思った。
「ねぇねぇ、そんなにつまらないならちょっとした運動はいかがかな〜?」
「へ?あらロイド、どうしたのかしら?」
どうやら声に出ていたらしい。
振り返るとロイドが立っていた。
「んん〜、それがねぇ、せっかく用意したのにランスロットのパーツが足りないんだよ。だからさぁ…」
「まさかそれを私に取って来いって言いたいの?」
スヴェナがロイドの言葉を遮って言った。
「ご名〜答〜!で、パーツって言うのはこれ。」
ノートパソコンの上にばさっと写真付の書類が落とされた。
「私まだ行くって言ってないけど?」
「ナイトメアは用意しておいたから。はい、これがキーだよ。」
「だから、まだ何も…。」
「IDはxo152。じゃあよろしくねぇ♪」
「って聞いてないし…。あぁもぅ…。あ、ちょっと待ちなさいロイド。」
言いたいことを言い終わって、さっさと立ち去ろうとしているロイドの袖をスヴェナは掴んで引き寄せた。
「あのねぇ、これでも私だってやることあるのよ。それに第一私は貴方の部下じゃないんだし、わざわざそんな面倒なことはしたくないわ。」
「ん〜でもねぇ、それいまゲットーにあるから君が一番確実に持ってきてもらえだし…。それに、君もそれに興味あるでしょ?」
ロイドは書類に視線を落とした。スヴェナもつられて見てみると、写真には茶色い髪の少年が写っていた。名前を見ると、クルルギ スザクと書いてあった。
「まさか、あの枢木首相の息子?とっくに殺されたと思っていたのに…。名誉ブリタニア人なんて…ふぅん…。」
スヴェナはしばし書類を見つめていた。
「…まぁいいわ。でも、その代わりランスロットのデータ、私にも見せてね。」
「もちろん。だめって言ったって、見る気でしょ?」
スヴェナはロイドに悪戯っぽく笑うと、ナイトメアの方へと歩き出した。
スヴェナは、用意されていたナイトメア<サザーランド>に乗り込むと、ロイドから預かった枢木スザクの識別コードを入力した。
映し出された地図のポイントによれば、新宿ゲットーの市街地の地下坑道に居るらしかった。
だが、おかしなことにまったく動かない。
「…死んでなきゃいいけど。」
スヴェナは小さく呟いた。
繰り出した新宿ゲットーは燦々たる状況だった。
建物は崩れ、イレブンの肉片や血がそこらじゅうに飛び散っていた。
これでは本当に死んでいてもおかしくない。
ポイント地点に着くと、枢木スザクはすぐに見つかった。
坑道の真ん中に一人うつ伏せになって倒れている。
スヴェナは大きくため息をついた。
取り敢えず生死を確認するため、サザーランドから降りて倒れているその人に近寄った。
首に手を当てると、脈はちゃんとある。
スヴェナは、再びため息をついた。
しかし先程とは異なり、今度は安堵のため息だった。
抱き起こしてみると微かながらも息もしている。
しかし、顔色がひどく悪かった。
ざっと身体を調べてみると、どうやら腹部を撃たれたらしい。
幸いなことに血はもう止まっていた。
「枢木一等兵、聞こえますか?枢木一等兵!」
枢木スザクの頬を軽く叩いた。一度小さく呻いたが、その後はまたぐったりとなってしまった。
仕方ない、とスヴェナは彼をひょいと肩へ担ぎ上げる。
横抱きにしてサザーランドに乗り込むと、回線を開いてロイドたちに救護班を待機させるように伝えた。
「はいはい、こっちは準備できてるから早く帰ってきてねー。」
ロイドが悠長な声で応対する。
そのときわずかな爆音と共に地面が揺れた。
近くで戦闘が始まったのだ。
スヴェナは巻き込まれないよう細心の注意を払いながらロイドたちのもとへと急いだ。