庭球

Come to Love Me.
1ページ/3ページ


「お前達、追試」

放課後、担任の小林に呼び出されたと思ったら急にこの一言。

お前達。複数形。

横をちらっと見ると私と同じように口をあんぐり開けた宍戸。

目の前に差し出されたのは英語のプリントだった。


****


「……ね、何か喋ろうよ」

しんと静まる教室で私は隣の宍戸を見る。
宍戸はひたすらプリントを凝視しては眉間にしわを寄せている。

「るせぇ、黙ってやれよな」

冷たく言い放つ宍戸に私は頬を膨らませた。
だって、しょうがないじゃないか。
解らないものは解らないのだから。

真っ白に近いプリントを見ながらシャーペンを指で回転させる。
授業中、頻繁にやっているからか、結構上達してきた。
クルクルペンを回していると宍戸の視線を感じた。

「何見てんのよ。早くプリントやりなさいよ」

さっきのお返しと言わんばかりの態度で宍戸を睨んだ。
ついでに宍戸のプリントをチラ見する。
私より真剣に取り組んでいるのに対して問題解けてないじゃないか。

何も言わず、視線をすぐプリントに移す宍戸。

あーあ、つまらない。
相手が岳人だったら一緒にペン回し大会やってただろうな。
でも、岳人は英語得意だからこんな課題やらないと思うけど。

そう、担任の小林に追試だと言われたのだが、
私と宍戸の猛講義の末、10枚の課題提出で追試を逃れたのだ。
で、今1枚目の課題を解いている最中である。

ペン回しも飽きてきた頃、再度宍戸へ視線を移す。
必死に問題を解いていると思ったのだが、窓の外を真剣に眺めていた。
私もその視線の先を見た。

テニスコート…。

そうか、こいつ確かテニス部だったな。
岳人もテニス部なんだよね。相変わらず部活でもピョンピョン跳んでいるんだろうな。



次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ