◇いろざし

□02.確信
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…来てしまった。
いつものメンバーからの遊びの誘いを断って来てしまった。

今日はあいにくの雨。
冷たくなったアスファルトに雨粒が容赦なく打ち付けるこんな土砂降りの中、私は裏門坂の中腹あたりで立っていた。

こんな天気のなか、来るはずない。

頭では分かっていたつもりだったが、体が動かない。
もしかしたらって少し期待してるんだと思う。
なんだろ…こんなの私らしくもない。
誰かのこと気になったり、何かに固執したり執着したり。そんなこと今まで無かったのに。
そんなこと、一番無駄だって思ってたのに。
私のさしている傘に当たるリズムは絶えない。
それを耳に忍ばせながら、私はゆっくりと目を閉じそしてまた開けた。
そして激坂の遥か下を見据える。
あの時…昨日ここですれ違った時微かに感じた。何かを。
ほんの数秒の間で私の中に色濃く焼き付いたあの緑色の彼が誰なのかを。
もう1度、この目で確かめたい。

ーーーーーーーーーー


それから何分経っただろうか。
待てど暮らせど自転車は1台も通らない。
それどころか人の気配すらない。
そりゃそうだ。こんな天気の中部活しようなんて思う人居ないよね。
はぁーあ、無駄足だった。わざわざみんなが帰るのを見計らってこっそり裏門坂まで来たのに。
傘をさしても、地面から跳ね返る雨水で履いていたローファーやソックスはびしょ濡れ。

「…帰ろ」

肌寒いし何よりこれ以上待っていても何も起こらない。
誰も来やしない。
肩を落とし短くため息をつく。
空はまだどんよりとしていて一向に泣き止む気配がない。
今度は長く、重くため息ついた。
何やってんだろ私。
なーんか、嫌いだな。
この雨も、ぐしょぐしょに濡れた靴も、湿気で広がった髪の毛も、みんなの嘘まみれの言葉や笑顔も嘘で塗り固めた自分自身も。
色のない世界も全部。

「嫌だな…」

霞のような声が溶けていった。
センチメンタルになってどうもいたたまれない。
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