◇いろざし
□01. 色のない世界
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「見て見てこれ!おニューなの!」
「へぇー、いいじゃん可愛いねそのヘアピン!!」
「あ、もしかしてそれ駅前に新しく出来た雑貨屋さんで買った感じ??」
よく聞く女子同士の会話。
新しいものを買えば即報告。
それで何でもかんでも可愛いって言えば済むと思ってる。
髪の毛にピンクのハートマークが付いたヘアピンを指し嬉しそうに笑ってるその子は、可愛いと褒められたのは自分じゃなくて『物自体』だということに気づいてない。
表情には出さない…水面下での探り合いや裏切りなんてもう慣れた。
みんな、仮面を被って生きてるんだ。
思ってもないことを口に出し、相手の顔色を伺いながら生きる。
それが当たり前だ。
「ねーねー、彩愛はどう思うー?」
それが、この世界を生き抜くための掟だと知ったその日から私は…
「すっごく可愛い!」
愛想笑いが上手くなった。