ようこそ、不死鳥さん

□おいで、マルコ
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マルコとの壁らしい壁が薄らいだあの日から、今日で5日経った




















「夏艶姉ちゃん!私の髪ゴム知らない!?」



「ぁあ!?知るか!洗面所は!?」



「ない!」



「んじゃ知らん!!」



「えー!?」



「トキ!テーブルにあったよい!」



「あ!マルコ兄ちゃんありがとう!…よっし、行ってきまーす!」



「「いってらっしゃい!」」




















マルコはあれからというもの、寂しさや悲しみと言った感情を顔に出す事が無くなった


いつまでもうじうじするタマじゃねぇとは思っていたからそこは当然だろう





今じゃ我が家の日常に違和感なく溶け込んでいる程だ


慣れってのは凄いモンだ





美依は電車で片道1時間の大学だから早めに出る


笑美は部活の朝練


末の杜希は毎度ギリギリまで居るからヒヤヒヤさせられっぱなしだ










アイスコーヒーを淹れてマルコに手渡せば、テレビを見ていたマルコは笑ってそれを受け取る


ソファでゆったりと寛ぐマルコを後目に洗濯物を干しにかかれば当然と言わんばかりに後ろに立つマルコ


これもまた、日常なんだ



















「ほい、マルコの分」



「すまねぇよい」



「別に、大した苦じゃねぇよ。干す位どうって事ねぇのに…お前は」



「若い女が男の下着なんかホイホイ触るモンじゃねぇよい!」



「へーへー、気ぃ付けますよ。ったく…」



















会話の通り、マルコは自分の洗濯物は自分で干すと譲らねぇんだ


最初は何故、と聞いても答えなかったが、しつこく聞けば男の下着があるんだから少しは恥じらえだと


別にそこまで初心じゃねぇんだけど





けどマルコが必死になって譲らねぇし、私も別に干したい訳じゃねぇからどっちだって良いんだがな


でもまとめてやっちまった方が早いし楽だと思う


それを素直に聞き入れねぇのがマルコという男だ



















「…っし、終わったよい」



「おー、こっちも終わった」



「……作業スピードおかしくねぇかい?」



「慣れだ、慣れ。マルコもその内慣れるだろうよ」



「………」



















マルコの性格で面白い発見をした


マルコはどうやら根っからの負けず嫌いな様だ


家事でも何でも、スピードだったり量だったり完成度だったり…何かと私と競ってくる


それが何だか1人に慣れていた私の平日の朝を彩ってくれた気がする





家事が終わればお互い好きな事をして時間を潰すのも日課になっていた


と言っても私は仕事を、マルコはこの世界の勉強をするのが基本だ


たまにゴロゴロしたり、この世界の音楽を紹介して一緒に聞いたりと…とにかく充実した時間を過ごしている





その旨を美依達に教えた時はブーブー文句を言われたモンだ


仕方ないだろ、小説家の退屈さナメんなよ




















「あとどれぐらいで書き終わるんだい?」



「今日…で最終章だな。日を跨ぐ頃にゃ終わってるだろ」



「徹夜かい?程々にしとけ」



「これ終わったら暫く休む。マルコもずっと家ン中じゃつまんねぇだろ?どっか出掛けようぜ」



「ッ……」



















−お誘いには乗りましょう−










(ヨシエ達が怒るよい)



(言わなきゃバレねぇよ。そこまでガキじゃねぇし)



(……因みにそれは、その……デー、ト…なのかよい……?)



(あ?……まぁ、マルコならアリか)



(ッ!!?)










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