ようこそ、不死鳥さん

□ようこそ、マルコ
1ページ/12ページ

「あ」




















ファミレスで昼食を済ませて家に帰ってから、私はある事に気付いて溜息を吐いた


荷物を運び終わった美依達が何事かと聞いた


それは面倒且つ重大な事だった




















「だー…食料品買うのすっかり忘れてた……」



「「「あ」」」



「どうする?もっかい行く?」




















何故かウキウキした顔で車を出すかどうか聞いてくる杜希にとりあえずデコピンしておいた




















「ンな事で車出すか、アホ。近くのスーパーでちょっくら買ってくるから、洗濯物乾いてたら入れといて」



「分かった〜」



「一緒に行こうか?」



「いや、いいわ。留守番頼んだ」



「「「はーい」」」




















打ち合わせでもしていたかのように声を揃えて返事をする妹達に背を向けて玄関に向かえば、


そこには部屋で荷物の整理をしていた筈のマルコが靴を履いて待っていた





コイツどこ行くつもりだ?


何故マルコが玄関で靴を履いているのか皆目見当がつかない私を他所にマルコは私に手を差し伸べた


それはまるでドラマで見た男性が女性をエスコートする時の仕草だった


飾ってる訳でもなく、凄く自然な動きに目を見張った










差し伸べられた手と本人の顔を見比べていればマルコは屈託のない笑顔を見せる




















「買い忘れだろい?荷物持ち位させてほしいねい」




















成程、聞かれてたか…


顔の半分を手で覆いながら深い息を吐いて考えた





午前中の買い物の様子を見る限り、目立った行動はしないだろう


だが目立つ、そりゃもう目立つんだ…


ただの買い物なのにマルコを動物園のパンダよろしくジロジロ見られるのは私の数少ない良心が痛む


こんな事なら変装用のサングラスでも…





……駄目だ、余計に目立つ


グルグルと考えていたが、最後はマルコの少し寂しそうな目に負けた










コイツ本当に私より年上か?


本当実年齢聞きたくなるわー


美依達に"兄ちゃん"呼ばわりされているからか言ってくれないがな




















「はぁー…、しゃーねぇ。行くか」



「よいよい」




















そんな口癖なのか分からない言葉を言いながらマルコは私の手を取った


まさか本当に手を掴まれるとは思ってもみなかった私は思わず立ち止まる




















「ちょ、マルコ!手ぇ離せって」



「ん?何かマズいのかい?」



「いや、マズくはねぇが…正直違和感だらけで落ち着かねぇ…」



「じゃあ慣れるしかないねい。生憎俺は天涯孤独なんで人肌寂しいんだよい」



「自分で言うか?天涯孤独とか…」



「良いじゃねぇかよい。早くしねぇと日が暮れちまう」



「チッ…分ぁった、これで行きゃいいんだろ、行きゃ」



「ありがとうねい」




















私より一回りは年上の筈のマルコの手


それは確かに男らしいゴツゴツとした無骨な手で…


だけどそれ以上に、異世界に対する心細さを感じてしまった










男と手を繋ぐなんて…生まれて初めての体験だな





ボンヤリとそんな事を考えていた私は、マルコに引かれるまま歩いていた




















−再びお買い物へ−










(て、お前道分かんねぇだろうが)



(散歩ついでに買い物と思ってねい)



(せめて買い物済ましてからにしてくれ)



(よいよい♪)










.
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ