ようこそ、不死鳥さん

□ようこそ、お兄さん
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「お兄さーん、トーストでいいー?ジャムトーストも出来るよ」



「あ、いや…何でも良いよい」



「んじゃトーストで。笑美、卵。美依、食器出して」



「「はいよー」」










一緒に住む事が決まった直後、男が急に腹を鳴らしたので朝食がまだだったのを思い出した


という訳で、これからの話は一旦中止して妹達と朝食作り





















「お兄さんコーヒーはブラック?牛乳さっき切れちゃったんだ〜」



「あぁ、ブラックで頼むよい。あー…」



「あ、東雲杜希です。四女です」



「そうかい、ありがとうねい…トキ」



「いえいえ〜」




















杜希がもう馴染んでる…


相変わらず他人の懐に入るのが早い






それからも男と杜希は色々喋っていた


杜希は私等の中で一番下で性格も幼い所がある


それのお蔭か畏まった雰囲気もすぐに無くなり、和気藹々とした空気を醸していた


男の顔から緊張の色が消え始めていた




















「ほい、オムレツ完成」



「サラダ出来たよ」



「バター塗り終わったよー」




















タイミング良く次々と完成する料理を皿に盛れば即席の朝食が出来上がった


男の前に出せば、男はおずおずと食事を食べ始める


別に何も盛っちゃいねぇよ




















「うめぇよい…」



「おー、美味いってよ。良かったなー」



「ねーねー、お兄さん名前は?このままだと"お兄さん"で定着しちゃうよ?」




















ソファでだらけていた杜希が何気に聞いた質問


それは何とも初歩的ながらスコンと忘れていた重大な事だった


私の中でも"男"でインプットされつつある





あっぶね…、言われなきゃ忘れてたわ





折角だから、お互い自己紹介をし合おうという流れになった




















「東雲夏艶、この家の…まぁ一応家主だな。歳は20歳」



「東雲美依でーす。夏艶姉ちゃんの妹で次女でーす。歳は今年19歳予定の18歳〜」



「東雲笑美です、17歳です。三女です」



「私はさっき言ったよ」



「歳」



「13歳ー」




















私等の紹介が終わって今度は男にバトンタッチ


男は既に朝食を食べ終わってて、コーヒーも飲み終えそうだった





つーか食うの早ぇな…




















「俺はマルコ、こことは違う世界で…船に乗ってたんだよい」



「船?海!?」



「あ、あぁ…海だねい」




















あ、杜希が食い付きやがった


自己紹介の途中だってのに…この馬鹿娘は




















「いーなー!海!キレイなのかな?」



「あぁ、綺麗だよい。水平線がずっと広がってるねい」



「水平線か〜、いいなー、そういうの」



「何にもねぇよい」



「でも海って良いよね。何か落ち着くって言うか…」



「あー、分からんでもない」




















海について語る私達を、男…マルコは少し悲しそうな顔で見ていた


それは、とても寂しく辛い感情に染まった顔だった…










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