ようこそ、不死鳥さん

□ようこそ、マルコ
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「ただいま」



「あ、おかえりー」



「今日の夕飯なーにー?」



「オムライス」



「「やったー!」」




















家に帰れば美依達は既に洗濯物を畳んでくれていた


それを片付ける様に頼んで、私は夕飯の支度を始める


すると横に何故かマルコが並んできた




















「?何か飲み物か?」



「いや、手伝おうと思っただけだよい」



「いいよ別に。マルコは休んでこい」



「そんな軟じゃねぇよい」



「それは知ってる」




















さっきの喧嘩で十分過ぎる程知ってるから


これ以上頑丈でもこっちが困るわ


主に心配で




















「簡単な作業なら手伝えるよい」



「あー…じゃあ皮剥き。ニンジン頼んだ」



「了解」



















そう言って包丁とニンジンを渡してから、私はピーラーの方を渡せば良かった事に気付く


まだ作業に入っていないと思ってマルコを見れば慣れた手付きでスルスルとニンジンの皮を剥いていってた


唖然としてガン見してるとマルコは手を止めて呆れながら私を見た




















「何だよい…」



「いや、凄ぇ手慣れてるから…正直驚いた」



「ガキの頃にやらされてたからねい。最近は包丁すら握ってなかったが…案外覚えてるモンなんだねい」



「1度身体に染み付いたモンって、中々抜けねぇよな」




















良い事も、胸糞悪ぃ事も…





あー、嫌な事思い出しちまった


止めだ、止め


料理が不味くなる





黙って無心で玉ねぎを刻んでると美依が戻ってきた


その手にはどこかで見た覚えのある本










……てかそれ私のだろ




















「あれ、マルコ兄さん何してるの?」



















いや、お前が何してんだよ




















「皮剥いてんだよい。ヨシエは読書かい?」



「うん。夏艶姉ちゃんが書いた本なんだ〜」



「へぇ、そう言えば小説書いてんだっけねい」




















マルコが感心した目で私を見るが、別段凄ぇモンじゃねぇ


私にはそれしか稼ぐ力が無かっただけだ


だから私は、小説家である自分を誇らしくは思っていない




















「別に大したモンじゃ…」



「ほら、これがこの間賞を受賞した本で、こっちは今度映画になるんだよ」



「おいコラ美依!!」




















何を勝手な事してくれてんだコイツは!?


その隣りでマルコは本に夢中になってやがるし!




















「お姉ちゃん自己評価低すぎなんだよ。いいじゃん、売れてんだから」



「あのなぁ…」




















勝手すぎる美依の隣りではマルコが凄ぇスピードで本を読んでいた


速読か?つか速過ぎだろ


ページ的に山場に差し掛かった所でマルコは驚きの表情をした





あー…確かそれサスペンス系だったな……


どんでん返しのオンパレードだった気がする





そしてマルコは一気にラストスパートまで読んでしまった


つーか早過ぎだから!


どんな読解力と目をしてんだコイツ!?




















−本は食後に−










(凄ぇ話だよい…。他にはねぇのかい?)



(あるよ〜。ほーらいっぱい♪)



(手伝えお前等!!)










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