ようこそ、不死鳥さん

□ようこそ、マルコ
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座り込んで俯く私の視界だと、薄暗い路地のコンクリートと自分の足しか見えねぇ


目の前にマルコが居るのは分かってるが、私はどうしても顔を上げる事が出来なかった





怒鳴っちまった


私を思って守ってくれたマルコを…私は怒鳴った


自分勝手なのはどっちだよ……ッ










今さっきまで自分がしていた事に罪悪感を感じていれば、正面にマルコがしゃがみ込む


呆れられたのか、最悪嫌われたか


それでも私は嫌だった





マルコを1人にするのが、何よりも嫌だったんだ…





何を言われても良いように覚悟を決めてから前を向くと、そこには信じられねぇモンがあった




















「ッ…見んじゃねぇ……!」




















顔から首まで真っ赤に染まったマルコが私の目を手で覆う


視界を奪われた私は、真っ暗な世界で何度もマルコの顔を浮かべた


冷静沈着という言葉が最も当て嵌まる男が、まさか赤面して照れているとは夢にも思わねぇだろ










手から伝わる熱がマルコの顔の熱の影響なのか少し熱く感じ、何だかそれが可笑しくて仕方なかった


気付けば私は、マルコの手を握って笑っていた





















「ッハハ!ハハハハ!!」



「!?おい…どうしたんだよい……!?」



「どうしたって、お前…ッ!そんな顔すんのかよ!」



「ッ!!笑うんじゃねぇよい!!」



「アッハハハ!腹、腹痛ぇ…ッ」



「〜〜〜〜〜ッ」



















さっきまで不安だったのが一気に吹っ飛んじまった


マルコはまだ顔を赤くしながら私を睨むが、私が笑っているのにつられたのか一緒に笑い始めた


それからは2人で一心に笑った


さっきの怒りを浄化するかの様に、ひたすら笑い続けた










笑いが収まる頃には、日は既に沈んでいた


マルコの手を引いて私は家へと向かった


大分遠くに来ちまった様で、家までは10分ぐらいじゃ帰れそうにねぇ





その間、マルコは私の過去について聞いてきた


普段なら"忘れた"で済ますところだが、笑ったお蔭で気分が良い私はマルコの質問に答えた


つまらねぇ上に果てしなく下らねぇ話を、マルコは真剣に聞いた


そんな真摯な姿にまた私は気分を良くしちまった





















「アレは知り合いだったのかい?」



「いや、覚えてねぇわ。昔相手した事があるのかもしれねぇが、何せほぼ毎日あんなのを相手にしてたからなぁ。
1日で20〜30人は余裕で殴ってたわ」


「何だってそんなに絡まれるんだい…?」



「あー…、何だったかな…。
あ、アレだ。私が13の時に知らねぇ女子に告られたのがきっかけだな」



「!!?女にって…ナツヤも女じゃねぇかよい!!」



「おー、一応な。何でも私に一目惚れだとよ。
勿論断った。そしたらその女に惚れてた不良のリーダーが私に喧嘩吹っ掛けてきやがってな。
面倒だし適当に謝っとけば事は済むと思ってたんだが、小賢しい真似しやがって…。
当時7歳だった杜希を誘拐しやがったんだ」



「トキを…!?」



「そしたらもう我を忘れてた。
気が付けば杜希が泣きながら私に抱き着いててな、周りには血塗れで倒れてる不良共が転がってた。
幸い命に別状はねぇが、その一件から私に喧嘩を売ってくる奴等が増えたんだ。
お蔭で大人に敵作るわ、同世代の奴等にはビビられるわで面倒くせぇ5年を過ごさせられた」



「…じゃあ、さっきの奴等は……」



「そん時に1回か2回負けてんじゃねぇの?あの様子じゃ多分負けてるだろうな」



「…そうか」



「そう、だからマルコは別に気にしなくていいんだよ」



「……よい」




















−仲直り−










(にしても…ナツヤは強いんだねい……)



(護身用に人間の急所を調べて知っただけだぞ)



(……………)










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